【廃村の調べ】 長い旅の途中、昔世話になった村に足を運んでみた。 以前立ち寄った時は、少ないながらも、明るい人々の声が溢れる豊かな村だった。 見ず知らずの旅人である私を温かく迎え入れ、共に語り、声を合わせ楽しい時間を過ごしたものだ。 懐かしい記憶に笑みを浮かべながら、優しい記憶の入り口に立つ。 しかし、そこにあの村はなかった。 風化した建物の中には、確かにそこに人が居たのだという形跡がある。 だが、あの時笑いあった人々の姿はない。 「だれか」 声を出しても、土埃が吸い取っていく。 なにがあったのか。 紛争に巻き込まれた? いや、飢饉か、それとも…。 考えても詮無い事と分かっていても思考は回る。 ぐるぐると。 皆で踊ったあの日のように。 ぐるぐると──。 あぁ、どこからか音楽が聞こえる。 ぐるぐる──。 ぐるぐる──。