ナレーター ひつじ村、山間のちいさくのどかなこの村。 ここで作られる高品質で美しい毛織物は、首都の人々の冬を温める毛布や外套として珍重されています。 夏でも気温のあまり上がらないこの村は、避暑地としても大変人気があります。 さて、次の連休ももうすぐですね。 まだ暑さの残る首都を離れ、秋の気配が感じられるひつじ村へ、ご旅行などいかがでしょうか。 少年 父親?もう死んだよ。バカ親父、俺が産まれてすぐに旅に出て、一度も帰ってこずに死んじまった。 ……もう3年も経つのに、いまだにうちに手紙がくるんだ。 助けられましたとか、恩人ですとか。 ……本人からの手紙なんて、一通もないのに。 俺は親父みたいになんてならない。 人に尽くして、家族のこと蔑ろにして、そんで一人で死んじまった。 ……ひでえ親父だよ、本当。 ロリ あの、あのね、おかねおとしちゃったの……。 どうしよう、がんばっておこづかいためたのに……。 おねえちゃん、あの、いっしょにさがしてくれる? あ、みつけてくれたの!? ありがとう! きょう、おかあさんのおたんじょうびなんだ! これでおかあさんにケーキかってあげるの! おねえちゃん、ほんとうにありがとう! シスター ようこそいらっしゃいました、勇者様。 この教会は神のご加護によりあらゆる魔物を寄せ付けません。 どうぞごゆっくり、御身を休めてください。 ……そうですか、もう行ってしまわれるのですね。 ではせめて、祈りを捧げさせてくださいませ。 ご一行のこれからの道のりに神の祝福のあらんことを。 そして皆様の大切な人たち全てに、幸せがありますように。 勇者様、どうぞ、お気をつけて……。