王様:勇者を派遣した張本人。 勇者:まっすぐな熱血バカ。 僧侶:聡明で優しい。 魔法使い:元々は魔術の研究家。頭の回転が速い。 戦士:まっすぐだが、バカではない。勇者を尊敬し、支える強い決意がある。 お01「魔王討伐の任、ご苦労であった。主らには相応の地位と褒美を取らせようぞ」 ゆ01「有難きお言葉ではございますが、我らはまだ旅を続けたいと思います」 お02「何故じゃ?」 ゆ02「魔王なき今もまだ、魔族の残党は各地に散らばっております。    そいつらに苦しめられる民を救い、また第二、第三の魔王が現れることのなきよう、全て討伐せねばなりません」 お03「……それは王立騎士団の為すべきこと。主らは引退してこの王都で、のんびりと暮らせばよいのだ」 ゆ04「今現在苦しむ民がいるというのに、我らばかり安穏と暮らしてはおれません。仲間も皆、同じ気持ちです」 そ01「……待ってください、勇者様」 ゆ05「僧侶?どうしたんだ」 そ02「わたくしは王のお話を受けようと思います」 ゆ06「何を言ってるんだ、お前だって苦しむ人がいるのはいやだろう?昨日だってちゃんと話し合ったじゃないか」 そ03「……わたくしは敵とはいえ、魔族との殺し合いは性には合いません。    この王都で、人々に神の御心を伝えることこそが、わたくしの使命なのです。    ……それに王は我らが主君。命に背くなど、始めからそんな選択肢はありません。そうでしょう?」 ま01「……そう、だね。その通りだ。私も王都に残るよ」 ゆ07「魔法使いまで……!一体どうしちゃったんだよ、お前ら!」 せ01「待て、勇者。ふたりの決断ももっともだ。それは尊重しよう」 ゆ08「でも……!」 せ02「……勇者。俺はいつまでも、どこまでもお前についていく覚悟だ。    ふたりが王都に残ったとしても、お前の決意は変わらないんだな?」 ゆ09「当たり前だ!」 お04「……そうか。では仕方ないな。僧侶、魔法使い。勇者と戦士を捕らえよ」 ゆ10「な……!?」 お05「聞こえなかったか?早くせよ、主らも反逆罪に問われたいか」 ゆ11「反逆って……!どういうことですか、王!?」 せ03「……世界より、魔王という脅威は除かれた。そして、"魔王を打ち倒した勇者"という新たな脅威が増えた。    お前は王都に残る道を選ぶべきだったんだ、勇者」 お06「そこまでわかっていて勇者と滅ぶ道を選ぶか。愚かだな、戦士よ」 せ04「俺は勇者への忠誠を誓ってここにいる。それだけのことだ」 ゆ12「ま……待て、僧侶、魔法使い!」 そ04「……ごめんなさい、勇者様」 ま02「私たちはまだ、死にたくはないんだ……」 ゆ13「なんでだ……!?俺はただ、人々を護りたかっただけなのに!」 せ05「……落ち着け、勇者」 ゆ14「これが落ち着いていられるか!処刑は明後日なんだぞ!?」 せ06「ああ、だから今夜脱出する」 ゆ15「……は?」 せ07「看守は俺たちに同情的だ。今夜逃がしてくれるよう、確約をとってある」 ゆ16「戦士……!」 せ08「……だがこれからは日陰者だ。二度と褒め称えられることもないだろう」 ゆ17「それでも俺は勇者だ。認められなくても、嫌われても、ずっとこの手の届く限り人々を助け続けてみせる」 せ09「フッ……それでこそ、俺の見込んだ勇者だ」 ゆ18「……!そこにいるのは誰だ!?」 そ05「……いけませんよ、勇者様」 ゆ19「僧侶!?」 そ06「看守を取り込んで脱走を図ろうなどと……それでは本当に、反逆者になってしまうではないですか」 せ10「僧侶、お前まさか」 そ07「看守には眠っていただきました。……そして、ここに鍵があります」 ゆ20「僧侶……!」 そ08「裏切ってごめんなさい、勇者様。赦してくださいますか……?」 ゆ21「もちろんだ!ありがとう、僧侶」 そ09「……わたくしの、ありったけのスペルをカードに籠めました。どうかおふたりとも、ご無事で」 せ11「……僧侶、お前」 そ10「たとえ何があっても、振り返ってはなりません。勇者様はこの世で一番、尊いお方なのですから」 ゆ22「僧侶、ありがとう!このカードは大事に使わせてもらうよ」 そ11「さようなら、勇者様。どうか、お元気で……」 ゆ23「僧侶が死刑……!?どうして、そんな」 せ12「反逆者を匿い、逃した罪だ」 ゆ24「戦士!僧侶を助けに行くぞ!」 せ13「ダメだ!僧侶が何のために犠牲になったと思ってる」 ゆ25「僧侶を助けられないなら、俺は勇者でもなんでもない、ただの卑怯者だ!」 せ14「国一つを、敵に回すことになるぞ」 ゆ26「わかってる。……お前は、残るか?」 せ15「愚問だな。いつまでもどこまでもついていくと言ったろう」 ゆ27「はは、ありがとな。    ……ここからは俺もお前も、本当の反逆者だ。地獄の底まで付き合ってもらうぜ。    さあ、いくぞ!」 せ16「おう!」