『まるくきりとる』 A:女性。普段は自分からリードするタイプではないと思われる。 B:男性。野球か何かをやっているようだが相当なインドア気質の様子。 A01「とりあえずどこ行く?」 B01「どっか行きたいとこある?」 A02「お前ノープランか」 B02「犬も歩けば棒に当たると言うし」 A03「わー、超不安」 B03「じゃ、とりあえずどっかぶらぶら?」 A04「仕方ないから駅前ぶらぶら」 B04「どっかにいい感じの棒が落ちてますように」 A05「その棒に頭ぶつけて痛い目見ればいいのに」 B05「それはそれで後々笑える思い出になる」 A06「感想には個人差があります」 B06「……はず」 A07「ちなみに普段はどういうお店回ってるの?」 B07「本屋行って漫画探したり、グローブとかスパイクとか見たり、あとはまあ、ゲーセンとか」 A08「そのアンテナの狭さで一体どうすれば棒に当たるというのだね」 B08「それは、まあ、はい。善処します」 A09「……じゃ、例えばこういうのも初めて?」 B09「何?指輪?ピンキーリングっていうんだっけ、そういうの」 A10「そっちに反応するか。……いや、お前にとっては小指サイズかもしれないけど、私の指だと   中指でちょうどいいくらいだから」 B10「あ、ピンキーリングって大きさの話なんだ」 A11「そこからか」 B11「値段の安い指輪をピンキーリングっていうのかと」 A12「ひどすぎる」 B12「こういうのって、やっぱりシルバーがいいの?」 A13「シルバーはあんまり嬉しくないなあ。すぐ悪くなるし、せめてホワイトゴールドとか、デザ   イン次第ではあるけどいっそ思いっきり安物の方がまだ……何?そのリング気に入ったの?   さっきからじっと見てるけど」 B13「んー、そういうわけじゃないけど」 A14「何?」 B14「こうして指輪越しに見ると……きみしかみえない」 A15「……わ」 B15「うわ、すごい顔」 A16「そりゃ。うん。だって……普通にドン引きなんですけど」 B16「正直、そういう顔も悪くないと思っている自分がいる」 A17「場所、わきまえてもらえませんかね。街ナカなんですけど」 B17「え、もう帰る?」 A18「割と本気で帰りたくなってきたけど……せっかくだし、もう少し、一緒に。ぶらぶら?」 B18「良かった。じゃあ、ドーナツでも食べに行く?」 A19「何故にドーナツ。というかほんとドン引きなんで、いいかげんそのリング戻せ」 B19「ドーナツの穴だけ残す食べ方って話をふと思い出したんだ」 A20「リングを覗くな。リング越しに私を見るな。そして意味のつながる会話をしろ」 B20「もしもドーナツの穴だけ持ち運べたなら、いつだってきみだけを見つめていられるのに」 A21「あー、今すぐこいつの口を引き千切ってドーナツの穴の中に埋めてしまいたい」 B21「あな恐ろしや」