財布 男A01「〜♪     ……お? ラッキー。    (男A、友人の男Bに電話をかけている)     あ、おー、おっすー。今何してる? あそう。     いや、俺ね、今、財布拾っちゃってさ。そうそう。     だからお前が暇ならこれからこん中の金でどっか遊びに行かねえかなぁと思って――     今? 今ねー。そう、その辺。あ、マジで? いいとこあんのこの辺」 女A01「どこかなー。んー」 男A02「おっけ、じゃあ、この辺で待ってるわ。おう。じゃあなー(電話切る)。ん?」 女A02「おかしいなー。このあたりだと思うんだけどな……」 男A03(うわ、可愛いな。ああいう子すげータイプ) 女A03「あのー……」 男A04「え。はい? 俺?」 女A04「あの、この辺で財布を見かけませんでした?」 男A05「……財布? はっ!」 男A06(ってなんで俺、反射的に財布隠しちゃってんの!     え、もしかしてこの財布って、この子の?     うわあ。隠さず返せば、この子の好感度上昇でお近づきになれたかもしれないのに!     いまさら出して変な疑いかけられると面倒だしなあ。     くそぉ、どうすれば……あ) 女A05「見ませんよね。すみません、急に声かけちゃって」 男A07「あの! よかったら、一緒に探しますよ」 女A06「え? でも、悪いですよ」 男A08「いいんですいいんです! どうせ俺暇ですし!」 女A07「わあ! ありがとうございます! 助かります!」 男A09「探し物させたら右に出るものないですよ俺、はっはっは」 男A10(よしよしよし。これで財布を探すふりをして、頃合いを見計らってあの子にこの財布を返せばいいんだ。     一緒に探すという行為も相まって普通に返すよりさらに好感度は上昇するはず! 我ながら最高の作戦だ!) 二人で探している。 女A08「ほんとにすみません」 男A11「いいんですいいんです。俺、困ってる人を見たら放っておけないタチなんで」 女A09「ふふ、優しいんですね」 男A12「いやいや、大したことないですよー(好感触好感触!)今日は、一人なんですか?」 女A10「いえ、友達と一緒なんです。早く見つけないと困っちゃうな……」 男A13「そうなんですか(そろそろかな……)あ! 財布みつk」 男B01「おーいお待たせー。ちょいと遅くなっちまったぜー」 男A14(うわーーー! そうだこいつ忘れてた! なんてタイミングで来やがんだ貴様は!) 男B02「なにしてんだよ、コンタクトでも落としたのか? あれ、お前裸眼じゃなかったっけ?     ま、どうでもいいけどよ、早く行こうぜ。ところでよ、拾った財布ん中幾ら入って――」 男A15「うわーーーー! うわーーーーー!」 女A11「あれ、お友達の方ですか。あ! やっぱり何か用事があったんですか!?」 男A16「あ、いやいや、全然ぜーんぜん、ないんですー、たまたま、偶然、会っただけなんでー……(男Bに小声で)ちょっと、来い」 男B03「なっ。なんだよ」 男A17「実はな。拾った財布があの子のだったんだよ。でさ、あの子ちょー可愛いじゃん? だから、財布返してあげて、     仲良くなりたいなあって思ってんだよ、協力してくれよ」 男B04「ああ? 俺はお前が金拾って遊びに行くっていうからわざわざ来てやったんだぞ?     おめーの恋のキューピッドしにきたわけじゃねえ。早く遊び行こうぜ」 男A18「頼むよ! 今度何かおごるからさあ」 男B05「知らねえっつってんだろ。適当に金だけ抜いて返しときゃ……ん?」 女B01「ねえー! あったー!?」 女A12「ううん、ない。……はぁ、どうしよー」 女B02「えー。あとはここら辺しかないはずなんだけど……」 男B06「事情は伺いました。私めもお二人のお手伝いをさせていただきます」 女A13「!?」 男A19「はぁ!?」 女B02「え……は、はぁ、どうも。……誰なの、この人……」 女A14「ぁ……え、えっとね――」 男A20「おい!」 男B07「……なんだよ」 男A21「その変わり身の早さの方がなんだよ! お前も人の事言えねえじゃねえか!」 男B08「いいじゃねえか。これでお前も、目的を遂行できるだろ? 俺も、お前に乗じてあの子を落としてみせる」 男A22「……はあ」 女A15「――で、この人が、その親切な人」 男A23「あ、どうも……」 女B03「……ふーん。ま、良いけどさ、早く探そ。日が暮れちゃう」 男A24(なんだよ感じ悪いな。あいつこんな女がタイプだなんて趣味悪すぎるぜ) 男B09「可憐だ……」 四人で探している。 男B10「あのー……」 女B04「いいから早く探してよ」 男B11「はい。……あの」 女B05「ねえ」 男B12「はい!」 女B06「あそこのあんたの友達さあ、普段何してんの」 男B13「え? あぁ。何してるって言うか、あいつはホント、何もしてないっすよ。毎日毎日勉強もしないでぶらぶらして、趣味っていう趣味もなくて、     自分勝手で。ま、少しはいいとこもあるけど、基本的にはダメなやつだなあ」 女B07「……ふーん。でも、こうやって人助けをするくらいは優しいのね」 男B14「(まあ、その優しさも下心100%なんだけどな……)あ、ちなみになんか趣味あります?」 女B08「別に。あるけど言うほどのものじゃないし」 男B15「いやーでも言わなくてもわかります。きっと素敵な趣味なんだろうなー。だってあなたがステキなんですもん」 女B09「ふふ。ありがと」 男B16「い、いやいやいやそれほどでも。あの、俺――」 女A16「そして数分後」 男A25「(いまだ!)あったー、見つけたー!(棒)」 女B10「ほんとに!?」 女A17「うわあ! 本当だー!」 男B17「おー、やるじゃねえかー!(棒)」 女A18「本当にありがとうございました!」 男A26(よしよし、これで準備は整った。俺は財布を返し、そしてこの子をお茶に誘い……) 女A19「良かったね! 財布見つかって!」 女B11「うん! あー、ほんと助かったー」 男A27&男B18「「え?」」 女B12「あ、その……ありがと……手伝ってくれて」 男A28「え。あれ。そ、その財布って」 女B13「間違いなく私の。どこにも見当たらなくってホント困ってたの」 男B119「うそ……」 女B14「あー、でもほんと良かった。あ……良かったらお礼も兼ねて、これからどこかで、お茶でもご馳走しても、いいけど……?」 男B20「え」 男A29「ええええええええええ!?」 女B15「ていうか行きましょ。連れてく。早く。歩いて!」 男A30「いや。でも、俺。あの、聞いて――!」 男B21「……なんてこった。俺は、なんのために……」 女A20「あのー、置いてかれちゃいましたね」 男B22「え? あぁ、そっすね」 女A21「……あの。……よろしければ、私たちも、どこかで、お話しません?」 男B23「……え?」 END