『モノクローム』 森を見よ! 春は緑、夏は青、秋は赤色、鮮烈に煌めいていた我らの森が! 見よ!頭上の曇天は触れられそうなほど低く濁り、 母なる火輪(かりん)の光を根こそぎ漉しとり、 申し訳程度に残された灰色の闇ばかりが地上に降り注ぐ! 大地は輝きを失った! 樹木は色を損なった! あの緑が!青が!赤が!べたつく黒に塗りつぶされてしまった! そして見よ!灰色の空から舞い降りる雪を! 黒い大地を!黒い木々を!枝を!木の実を!枯草を!命が息づいていた何もかもを! 雪が!白い雪が!何もかもを覆い隠す! 色彩を奪われ黒く濁ったありとあらゆる何もかも!何もかもを、白く!白く! 白と黒だ!白と黒に! あれほど煌びやかに彩られていた我らの森が! 白く!黒く!あるいは灰色に! 森を見よ!我らの森を! 我らの森はことごとくモノクロームに染め替えられた! 冬の訪れだ! これぞ冬の訪れ! 大いなる微睡み(まどろみ)の季節がやってきた! さらば同胞(はらから)!緑萌える日にまた会おう! しばしさらば! しばしさらば! 冬の訪れだ!