『dear』 A:古川標(ふるかわ・しるべ)。生徒。色々あって噂に名高い先生の師事を受けることに。 B:尊(みこと)先生。言葉と名前を愛する人。本名不詳。 A01「初めまして。古川標(ふるかわ・しるべ)と申します。古い川に、目標の標と書いて、しる   べです。よろしくお願いします」 B01「こちらこそ、よろしく。私のことは……そうですね、君は私のことを何と呼んでくれます   か」 A02「え……その、先生、とか」 B02「名前がいいですね」 A03「申し訳ありません。恥ずかしながら、私、まだ先生のお名前を伺ってなくて、その」 B03「君の好きなように呼んでくれてかまいません」 A04「え、その、わ、私が、先生の名前を、勝手に?」 B04「お願いします」 A05「ええ?そ、その、では……尊(みこと)先生、なんていかがでしょうか」 B05「素敵ですね。由来を伺っても?どうして私に尊という名を与えてくれたのか」 A06「あの、私、先生のことは」 B06「尊。私の名は尊です」 A07「その、尊先生のこと、私、噂くらいでしか、よく知りませんでした。ですが、その噂に聞く   尊先生はとても素敵な方で、ずっと、ずっと尊敬していました。だから……」 B07「なるほど。尊敬の尊の字を取って、みこと。あなたの思いがストレートに伝わってきます   よ」 A08「単純ですみません」 B08「いえ。私はこの名前を大変気に入っていますよ。何せ尊(みこと)という字は杯を持つ手を   表しているのです。私、お酒が大好きなのですよ」 A09「あ、ありがとうございます。良かったです。あの、それでは、先生は私のことを何と呼んで   いただけますか」 B09「そうですね。……いえ、やはり標さんとお呼びしたいですね。標。高く天を指し示す梢のよ   うに、誰よりも先に立ち、人を導くもの。いつか巣立っていくあなたにとって、これ以上に   似合いの名前はありません」 A10「あ、それ父がつけてくれた由来とは少しだけ違います。父は、どんな暗がりでも道に迷わな   いように、辛く苦しいときも自分の生きたい道を見失わないようにと、標という名前をつけ   てくれました」 B10「なるほど、素敵です。では、私はお父君とは別の思いを込めてあなたの名前を呼びましょ   う。これからよろしくお願いしますよ、標さん」 A11「はい。よろしくお願いします、尊先生」