『家庭の数だけきなこ餅がある』 A:女性。料理は母親から習った。プロポーズを受けるなら海の見えるレストランで。 B:男性。肉野菜炒めくらいは作れる。婚約指輪ではなく婚姻届を持っていくタイプ。 A01「きなこ餅ってさ、自分の家の味があるよね」 B01「そうか?」 A02「あるよー。きなことお砂糖のブレンド具合とか。それとお塩を入れる加減が重要なんだ」 B02「え?きなこに砂糖なんて入れないだろ」 A03「ゆー君ってホント料理に疎いよね。きなこって、そのままだと味しないんだよ」 B03「いや、そのくらい知ってるわ。でもきなこ餅って黒蜜かけるだろ?砂糖要らなくね?」 A04「黒蜜?」 B04「黒蜜。かけるだろ、黒蜜」 A05「かけるの?」 B05「……マジで」 A06「どーしよ。ゆー君、私黒蜜なんて持ってないよ」 B06「うん、じゃあ、まあ、無くてもいいんじゃね?」 A07「でもでも、ゆー君的には黒蜜かかってるのがきなこ餅なんでしょ?」 B07「だからいいって」 A08「良くないよ。だって、ゆー君がおいしく食べてくれなきゃ私も美味しくないもん」 B08「あー、じゃああれだ。一度お前の家の味を食べてみたい」 A09「えっ」 B09「……ということにしとこう」 A10「何それ。最後のすごく余計。ぶち壊しだー」 B10「うるさいな。何なら言いなおすか?」 A11「……それは、困る。なんというか、今言われると、すごく困る」 B11「何で」 A12「いいの!じゃあ、私もゆー君の……じゃなくて、黒蜜かけたきなこ餅、食べてみたい」 B12「今から黒蜜買って来いと?」 A13「もうお餅焼けたからダメ。今はお砂糖味のを食べて、晩御飯に黒蜜味のを食べます」 B13「えー、昼夜(ひるよる)連続できなこ餅かよ」 A14「大丈夫。きなこ餅は美味しいから。……うん、いい感じのきなこができた」