『ありふれゆるりり』 A:大きな魔法使い。奇跡と魔法を教える人。 B:どこにでもいる魔法使い。奇跡と魔法を教わる人。 A01「僕は大きな魔法使い。奇跡をいっぱい巻き起こすよ」 B01「大きいの?」 A02「大きいよ」 B02「魔法使いなの?」 A03「魔法使いだよ」 B03「奇跡は起きるの?」 A04「いっぱい起こすよ」 B04「奇跡が起きたら、それは陳腐っていうんだよ」 A05「知ってるよ。バナナという果物は手で簡単に剥けるし、そのまま生で食べられるけれど、   あれって実は奇跡だよ」 B05「それは陳腐な奇跡だね。ミカンもライチもマンゴーも手で剥けるよ」 A06「何を隠そう、バナナもミカンも僕がつくったんだ」 B06「それはすごいことだね」 A07「奇跡だよ」 B07「けれど陳腐だ。どこにだってあるもの」 A08「そうだね」 B08「あなたは神さま?」 A09「魔法使いだよ。大きな魔法使いさ」 B09「僕がこうして生きていることも奇跡?」 A10「そうだよ。奇跡だよ。けれどそれは僕が起こした奇跡じゃないよ」 B10「魔法使いは他にもいるの?」 A11「そうだよ、例えば君のお父さんとお母さんは魔法使いだよ。彼らが愛してくれたから君が   いる。それとご近所さんも魔法使い。彼らが愛してくれたから君がいる。あと友達も先輩も   学校の先生もみんなみんな魔法使いさ」 B11「陳腐なお話だね」 A12「何より君が君自身を愛したからこそ君は生きている」 B12「ますます陳腐なお話だね」 A13「奇跡って陳腐だよ」 B13「陳腐なものを奇跡とはいわないと思うんだ」 A14「陳腐だけれど、それはきっと素晴らしいことだから、それはやっぱり奇跡だよ。心が、例   えば君の心が、それを素晴らしいことだと訴えるなら、それはきっと誰かの魔法だよ」 B14「僕がポケットを叩いてもビスケットは2つに増えたりしないけれど、それでも魔法使いはど   こかにいるの?」 A15「魔法使いはどこにでもいるよ。僕は魔法使いだし、君も魔法使いさ。誰にもビスケットを   増やすことはできないけれど」 B15「いいや、ビスケットを増やすなんて簡単なこと。僕がバターと砂糖と小麦粉を混ぜてオー   ブンで焼いたなら、今すぐにでもビスケットはたくさん増やせるよ」 A16「それはまるで奇跡のようなお話だね」