「大人になったら結婚しようね。」 そんな子供時代の約束を覚えているのは俺だけなんだろうな…。 先日、飲み屋で友人から聞かされた話だ 井上「おい、リッちゃん結婚すんだってな!」 伊藤「えっ…。そ、そうなんだ。」 井上「何だよ。お前知らなかったのか??もう20年くらいの付き合いなんじゃねーのかよ。」 伊藤「あぁ。そうだけど。でも、聞いてないよ。そんな話…。」 井上「まぁ言いづらいのかもな。ま、でも相手がユタカならいいんじゃねーの?」 伊藤「そうだな…。」 リッちゃん。リカは幼稚園からの幼馴染だ。 同じ団地で育ち、遊んだ仲だ。 あの頃の団地は、男は俺一人。同い年はリカだけだった。 だからだろうか。親同士の交流もあり、いつも隣にはリカが居た。 俺はクソガキながら「将来はこの子と結婚するのかな?」なんて思っていたり。 しかし現実はそんなものじゃなかった… 別々の大学へ進学してから、リカは高校の同級生で、俺の友人でもあるユタカと付き合い始め、 俺は俺で遊んでばかりの日々を過ごしていた――― 井上「まぁまたアイツらから連絡あると思うし、その時は祝ってやろうぜ!」 伊藤「あぁ。じゃ、またな。」 (ユタカと付き合ってると聞いた時と似てるな、この感じ。 俺はずっと、ずっと、ユタカよりも前からずっと…。) 酔った足で部屋へ戻りベッドに倒れ、何を考える訳でもなくただただ天井を見つめていた。 そういえば先日、差出人不明の手紙が届いていたことを思い出し、 何気なく封筒から取り出し、読み出した。 「伊藤ゆうすけ様へ  ずっとゆうちゃんが好きだったのに、伝えられなくてごめんなさい。  ユタカはすごく優しくて、大事にしてくれる素敵な方です。  付き合いはじめた時、ゆうちゃんに『幸せにな』と言われて嬉しかったよ。  でも少し寂しかった…  付き合ったらどうなるんだろー?とか考えたりした時もありました。  私は小さい頃からずっと、ずっと伊藤ゆうすけくんが好きでした。  ゆうちゃんの言ってくれたように幸せになるね。  リカより」 俺は馬鹿だ。世界で一番の大馬鹿野郎だ。 今すぐ死んでしまいたい。 クソッ、壁殴っちまった…。俺がちゃんと想いを伝えていれば… その時、PCが独りでに起動しはじめた 画面には 『人生をリセットしますか??』の文字 タイムスリップものなんてもう需要ねーよ。なんて独り言をつぶやきながら カーソルを迷わずyesへ持っていく。 神様、居るならどうかもう一度俺にチャンスを…(カチッ!! ※手紙はリッちゃんが読む感じで