【彼にとっても残念な結果】 A:少女。夢見がちで行動力があるという迷惑なお嬢様。少々高飛車なところもあるが意外と思いやりがあるやさしい性格かもしれない。 B:青年。ユニコーンの化身で少々胡散臭い感じのする優男。乙女に対して夢を抱いているものの、人間に対しては不信感を抱いている。 (※人があまり立ち入らない森の奥。歩き疲れた態の少女がとぼとぼと歩いている) (SE:やわらかい土を歩く足音。数歩で立ち止まる) A01「見つからないなぁ……」 (SE:茂みを掻きわける音) B01「やぁ、かわいらしいお嬢さん」 A02「きゃぁっ」 B02「驚かしてごめんよ。怪しいものじゃないんだ」 A03「……怪しくない人も、怪しい人もどちらもそう言うと思うんだけど」 B03「うーん、それもそうか。ところでこんな森の奥まで来るだなんて、道にでも迷ったのかい? 入口まで送ろうか」 A04「別に迷子なんかじゃないわ。探しモノをしているの」 B04「こんなところで?」 (SE:カラスの鳴き声と木の葉の揺れる音) A05「そうよ、悪い?」 B05「別に悪くはないけど……よかったら一緒に探してあげようか。一人より二人で探した方がきっと早く見つかるんじゃないかな」 A06「残念ながら、あなたには見つけられないわよ。ううん、見つけられたとしても、あなたじゃ捕まえられない」 B06「捕まえるってまさか……君の探し物って」 A07「そう、ユニコーンよ。ユニコーンをおとなしくさせることができるのは、清らかな乙女だけ。もちろん私もその資格はもってるわ。でも、男のあなたが近付いたところで、獰猛な本性を露わにして蹴り殺されるのがオチね。わかったらさっさとどこかへ行ってちょうだい」 B07「確かにこの森にはユニコーンが出るという伝説もあるけど、まさかそれを信じて君のような若いお嬢さんが一人でこんな森の奥深くまで来たのかい?」 A08「反対されるのはわかりきってたから、家を抜け出してきてやったわ」 B08「そんなに角が欲しいのか」 A09「……角? ああ、解毒作用があるのよね。私は別に角が欲しいとは思わないけど」 B09「どうして? 君自身が求めていなくても、高額な報奨金を払う金持ちもたくさんいると聞くよ」 A10「だって取ったら可哀そうじゃない」 B10「別に痛くはないんじゃないかな」 A11「だとしても別に角に興味はないわね。私は、純粋にユニコーンに会いたいの」 B11「純粋に……か。実は僕」 (※Bをさえぎって) A12「そして、ユニコーンの肉球がどんな感触なのか思う存分に味わいつくすの!!」 B12「えっ、肉球!?」 A13「そう肉球よ!あれぞ自然界が生み出した究極の癒しだわ!!ザラザラとした質感なのに触れているとじんわりと温かくなってくるところに愛おしさを感じるの。そしてなによりあのぷにぷにとした弾力感!肉球だけを1時間と言わず2時間でも、なんなら一日中触って撫でてつつき続けても飽きないわよね!」 B13「あの、ユニコーンの話だよね」 A14「ユニコーンの話よ」 B14「えっとユニコーンの形態はご存じで?」 A15「鋭い角を生やしている純白の馬でしょ」 B15「そう、馬。いや、馬と一緒にされるとなんか釈然としないものを感じるけど」 A16「でも、ユニコーンってとってもファンタジーな世界の生き物でしょ。形態には諸説あるし、肉球がある可能性は捨てきれないと思うの。いいえ、肉球はあってしかるべきね!」 B16「そう言われても」 A17「とにかく、私ユニコーンを見つけるまでこの森を出ないから。あなたは邪魔だから早く私の前から去りなさいな」 B17「ユニコーンを見つけるまで、森を出ないのか。……しょうがない、後ろ向いてて」 A18「そのまま振り向くつもりはありませんから。さようなら。心配してくれてありがとうね」 (SE:ゆっくり歩き始める足音) (SE:パーっと派手なエフェクト音) (SE:馬の鳴き声) A19「え?」 (※Aが振り向くと、そこには変身を解いてユニコーンの姿となったBがいた) B18「これで気は済んだかな?」 A20「うそ……」 B19「騙してごめん。でも、僕を探してやってくる人はみんな角目当てで、うんざりしていたんだ。君は、目的はどうあれそういう損得では動かない人間のようだし今回だけ特別」 A21「肉球がないーーーーー!!」 B20「ってやっぱりそこなのか!?」 A22「私の憧れと時間を返してよ!!どんだけ探し回ったと思ってるの!?」 B21「知らないよ!」 A23「今朝からずっと探してたんだから!!」 B22「今朝からなの!?むしろ運が良い方だろ」 A24「結局肉球に巡り合えなかったんだから運なんてよくない!」 B23「運が悪かったのはこっちの方だ!(小声で)人気のない森に珍しく乙女が来たと思ったらこんな残念な子だなんて」 A25「何か言った?」 B24「なーんにも。ところで、気は済んだんだろう。入口近くまで送るからもう帰りなよ」 A26「あら、背中に乗せてくれるの?」 B25「どうぞ、お嬢様」 A27「ありがとう。ふーん、ユニコーンも意外と便利なのね」 B26「そんな褒め方されても全然嬉しくない……」 A28「あーあ、でも本当に残念だったなぁ。理想の肉球に出会えるかもしれないと思ったのに」 B27「伝説の一角獣に会えて、こんなにがっかりされたのは初めてだよ……」