F氏がコンビニに傘を忘れた事に気がついたのは 私との通話を終えて、ポケットに携帯電話をしまった後だったそうだ F氏はしっかりした奴なのだが、どういう事か傘にだけは縁がない しっかりしたやつなので、出掛けに天気予報をチェックする そして降りそうな時は必ず傘を持って出掛けるのだが、いつも必ず無くしてしまう とはいってもビニル製の安物だし、仕方がないと諦めた瞬間 雨が降り始めた 暫く雨に降られたF氏だが、結局我慢ならず改めて傘を買うことにしたそうだ 買ってすぐに雨は止んだので、少し損をしたと思ったそうだが その後、電車の中に傘を忘れた損に比べれば、どうということもなかった 駅を出るとやはり雨が降っていた、三本目の傘を売店で購入したが 開かなかったそうだ、バネがなんとか騒いでいたが、要は不良品だったのだろう 今私の前で、ズブ濡れになった理由を説明しているF氏はつまりそういうやつなのだ その三本目も駅から空港までのほんの僅かの間に、子供らしき人物に持って行かれたらしい 仕方なく私の傘に入れてやることにした シャトルの搭乗口は長蛇の列で、傘からはみ出した部分はびしょびしょになった やっと席に座れた時、なぜかF氏は笑っていた 「傘を持っていても隕石は防げない、そう思うだろう? ところで火星でも雨は降るのかね? 傘持ってないんだが」 F氏とはつまりそういう奴なのだ