今となっては面影すら残らないが かつて私は鳥だった。 白い羽に包まれた、一羽の鳥だった。 しかし私は飛べなかった。 翼はあれど、空に向かって羽ばたけない。 美しく歌うことすら適(かな)わなかった。 夜の静寂に耐え切れず、目一杯大声で叫ぶことしかできない。 ある日私は殺された。 何の前触れもなく、ただいつも通り 地を歩き、鳴くことをしていただけなのに。 そして私は切り裂かれ、見知らぬところに運ばれて あなたの前にいる。 衣が付いているか、鍋の中で煮込まれているか タレに付けられ、串に刺されているか。 今あなたの前にいる私の形状が何か定かではないが。 いずれにせよ好き嫌いせずにちきんと食べなさい。