+++登場人物(後々、追加)+++ 七川西高校、1年C組。 御津(みつ):男 識乃(しきの):女 ○七月中旬、廃病院前  【月明かりと二本の懐中電灯だけを頼りに、枯れかけた竹薮に身を潜め、廃病院の一階の窓を覗き込みながら】 SE:笹の葉が擦れる、乾いた音。 A01-御津「し、……識乃…?」 B01-識乃「静かにしろ!今、いいところなんだから!!」 A02-御津「いいいいところって、だ…っ…だだだだって…あ、あれ!」 B03-識乃「煩いっ、御津は黙ってカメラの準備をすればいいんだ!撮り逃がしたらどうしてくれる!?」 A03-御津「ぜ、絶対に呪われる…っ…そ、そうなったら君のせいだからね!」 A04-御津(夏が近付き、テレビやラジオから心霊現象の特集が流れ始めた。両親に曰く、昔に比べてその手の番組は随分と少なくなったらしいけれど、僕たちの――正確には、僕の友人の興味を沸かせるには十分だった。高校生にもなって思春期にありがちな厨二病という思考を脱することなく「(B04識乃)私は退屈が嫌いだ。退屈は人を殺す、君。私に面白いものを見せてくれ」などと、教室のど真ん中で堂々と僕に言ってのける程度には痛い。そんな彼女に幼馴染だからと従っている僕も、周囲からは相当な変人の扱いを受けている。納得がいかない。ともかく、僕の大切な幼馴染であり、唯一の友人であり、手に負えないほどの厨二病末期患者である識乃は、やらせに定評のある心霊番組に影響された。彼女は近所の家電店で特売だったらしいテープレコーダーを手にし、常識的かつ良心的な兄を騙して借りてきたという一眼レフのカメラを僕に押し付け、先週の心霊番組で紹介されたばかりの廃病院に僕を連行した) B05-識乃「あの噂は本当だったのか……凄いぞ、御津!窓の向こうに人影が通った!!」 A05-御津「い、言わなくていいからっ……!」 B06-識乃「君、そんな風に怖がってどうする?幽霊の思う壺じゃないか」 A06-御津「思う壺って、僕らは戦いに来てるわけじゃないんだよ!?」 B07-識乃「何を!いいか、私たちの目の前に立ちはだかるものは全て敵だ。気を抜いたら殺られると思え!!」 A07-御津「識乃ー……、」 A08-御津(電車を子ども料金で乗ってもおかしくないような小柄な体格と、襟足で緩く巻かれたミルクたっぷりのココアみたいな色に染めた髪、少し猫っぽい両目が彼女の可愛らしさを引き立て、しかし、まるでアメリカ映画に出てくる特殊部隊のような黒一色の戦闘服がそれらを台無しにしている。僕は意気揚々として病院の曇りガラスにレコーダーを向けている識乃の隣で、がくりと肩を落とした。) B08-識乃「行くぞっ、御津!」 A09-御津「えっ、行くって……帰るの!?そうか、良かった!僕も帰ろうって言おうとしてたところなんだよ」 B09-識乃「バカを言え。君、病院の中に行くに決まっているだろう?」 A10-御津「識乃が、一人で?」 B10-識乃「こんな危ない場所に、か弱い美少女を一人置いていくというのか!君は!!」 A11-御津「自分で言うの!?」 B11-識乃「御津は私に従ってシャッターボタンを押すだけでいい。戦闘になったら後ろに下がれ、私が守ってやる」 A12-御津「か弱い美少女の台詞じゃないよっ、絶対!」 B12-識乃「……行かないの?」(少し声を高めに、可愛らしく装って) A13-御津「行きます」(即答)