「幽霊」 住人:人畜無害の一般人。一人暮らし。 幽霊:ちょっとテンポのズレたのん気な幽霊。地雷踏むとすごいことになるよ。 幽霊「あの〜…」 住人「うわぁ!!な、なんだ!?」 幽霊「あ、すみませんあの、私、はい。 幽霊です」 住人「ゆ、幽霊……!? ……の、呪うのか?」 幽霊「やめてくださいよ、そんな!呪うなんて!おっかないなぁ……」 住人「じゃ、じゃあこう、何かこう、恨みとか。 うらめしや〜とか?」 幽霊「別に、特に恨めしくはないですね…すみません」 住人「憑りつくのか!?」 幽霊「……そのぉ〜……憑りつく、ってあの〜、どうやったら……?」 住人「こっちが知るわけないでしょ?! 生きてんだから!」(食い気味で) 幽霊「ひぃぃ! で、ですよねぇ〜……」 住人「じゃあ、じゃ、じゃあ何しに出てきたんだよ……」 幽霊「……さ、さぁ〜……?」 住人「さぁ〜、ってそんな首かしげられても! なんか未練があって成仏できないとか、そういうあれじゃないの!?」 幽霊「未練…………ああ!」 住人「わぁ! 急に漂うなよ!」 幽霊「そういえばあの、ちょっとだけですが、おなかすいてる気がします」 住人「しかもすごい思いついたっぽい割に驚くほど自信なさげな答え! ってか、幽霊もハラとか減ったりすんのかよ」 幽霊「なんかよくわかりませんが、多分こうなる直前までその、ちょっとだけ空腹だったんじゃないかな、って……ほら、餓死とかありますし」 住人「ちょっとだけってレベルじゃねぇぞそれ! 死ぬほどハラ減ってんじゃんっていうかそれが原因で死んでんじゃん!!」 幽霊「なんかそういえば、餓死だったっぽい気もしてきました……」 住人「もしそうなら原因は、ぜってーその、のん気過ぎる性格が原因だろうな……」 幽霊「あはは、よく言われちゃうんですよねー」 住人「褒めてねぇよ!! ……で、成仏どうやったらしてくれんの」 幽霊「成仏……やっぱり、した方がいいですかね……?」 住人「うん、いいに決まってるよね?! こっちも大分落ち着いてきたけど、けっこーまだ心臓ばっくばくだし!」 幽霊「こっちもこの姿さらすのに随分勇気がいりましたよ。 心臓バクバクでした」 住人「そっちは心臓既に止まってるでしょ?! 死んでんだから!!!」 幽霊「あぁ〜、そういえばそうですねぇ。 まぁ、表現の一つ、ってことで」 住人「なんだかなぁーもう! ……で、具体的にどうすりゃいいの」 幽霊「成仏ですか?」 住人「そうだよ、とっとと成仏してくれよ!」 幽霊「……どうやったら成仏ってできるんでしょう」 住人「だからこっちが知るわけないでしょうが!! ……なんか、未練があるならそれをなんとかすればいんじゃねえの?」 幽霊「つまり、空腹を満たす……」 住人「なんでこっち主体で話進んでんだよ…あー、ほら、生前の好物とかないの?」 幽霊「好きな食べ物、ですか……」 住人「……なんでちょっと照れてんだよ」 幽霊「いや、なんか、お見合いみたいだな、って……」 住人「ああもうイラッとくるの通り越していっそ清清しいくらいのズレっぷりだなあおい! 成仏すんの! これから! その為に空腹を満たそうっていう話!」 幽霊「あぁ〜そうでしたね。 ええと……カニが……」 住人「カニだぁ?! そんなもんぽっと出てくるわけないでしょうが! ……あ、いや待てよ、ちょっと待ってて、確か……」 (歩き去る足音) 幽霊「え、まさか本当に、カニ常備して……」 (歩き来る足音) 住人「あったあった、ちょうど最後の1個だけど! はい!」 幽霊「……え、あの」 住人「カニじゃないけど、カニそっくりの、かにかま! これで成仏してくれ」 幽霊「…………私ね、常々思うことがあるんです」(ラップ音) 住人「え、何、何これなんかあれ、これもしかして、地雷?! 地雷踏んじゃった!?」 幽霊「1ミクロンもカニ要素のないただの練り物の分際でカニの名を冠するおこがましい存在だな、って。 そんな奴、この世にもあの世にも必要ないな、って。」 住人「うわこいつ急に空気変わりすぎっていうか怖ぇ!! マジ怖ぇし!!」 幽霊「アラスカだかオホーツクだか知りませんがこいつらをこの地球上から駆逐しないことには真の平和が訪れることはありえないと思うんですよねええええええええ!」 住人「おおおおおおお、落ち着け、な、落ち着こう! 電気がついたり消えたり窓ガタガタいったりしてすげー怖いから!」 幽霊「断罪せよ! かにかまを抹殺せよ!」(窓割れる音) 住人「うわああああああ!!!」 (風の音) 住人「……あ、あれ……? なんか、いなくな、った…っぽい?」 幽霊「断罪せよーーーーーー!!!」(遠くで小さく) 住人「……メーカーに、クレーム言いに行った、の、かな……」