花咲く、森の道で   (SE:走り来る足音、女性の軽いものと男性の重いもの)   (SE:双方止まる) お嬢01「さすがだね、クマ」 クマ01「伊達や酔狂で”キリングベア”の名を冠しているわけではない、ってこった」 お嬢02「ふん、相変わらずいけすかない男だ」 クマ02「俺はお嬢が大好きだがな」 お嬢03「そういうところがいけすかないって言ってんだよ」 クマ03「ハハ、随分と嫌われちまったなァ……」 お嬢04「……悪いけど、あたしはこのまま逃げさせてもらうよ」 クマ04「かまわんさ。 お嬢の逃走ルートは既に予測済みだ」 お嬢05「チッ……面倒なことに」 クマ05「組織の、鋼の掟からは逃れられん。 たとえお嬢であっても、見過ごすわけにゃいかんのでな」 お嬢06「クマ、あんたは今の、現状のあの組織に満足できてんのかい?」 クマ06「ほぅ、お嬢お得意の心理戦かい? 悪いが俺には効果ないぜ」 お嬢07「あたしは、あんなクソ親父なんて大嫌いだった。 血と硝煙と、酒のにおいが大嫌いだった」 クマ07「……」 お嬢08「でも、叔父貴が……あのクソ親父を始末して、これでせいせいするって思ったけど……」 クマ08「やめようぜ、その話は……」 お嬢09「クマ、叔父貴の腹心のあんたにこんな事言うのもなんだけど……」 クマ09「わかってるさ……お嬢、あんたの逃走ルートは既に予測済みだ」 お嬢10「それでもあたしは、逃げ切ってみせる」 クマ10「必ず、生きてこの森を抜けろよ」 お嬢11「……なんだって?」 クマ11「この先に、俺が過去に仕掛けたトラップはない」 お嬢12「待ちなよクマ、それっていったい──」 クマ12「全て解除した。 言っただろう、逃走ルートは既に予測済みだ、と」 お嬢13「ははん……そうかい、キリングベア自らお出ましの理由がやっとわかったよ」 クマ13「察しが良くて助かるぜ。 …そうだ、俺はクマ──キリングベアだ。 お嬢、あんたは逃げろ。     俺は、本気でお嬢を追う」 お嬢14「引止めに来たわけでも、今ここで始末するために来たわけでもない。 端っからあたしと……。     あたしと、追いかけっこをしようってことだったのかい」 クマ14「旦那への義理を、果たさせてもらう」 お嬢15「ふふふ……いいね!ゾクゾクするよ!! ──本気で、来な!」   (SE:爆発音) クマ15「くっ! …味なマネをしてくれる」 お嬢16「タダでやられる義理はない! あたしは誰よりもこの森を熟知している!」 クマ16「俺は誰よりもお嬢を知っている、ずっと側で見てきた!」 お嬢17「つかまえてごらんよ、クマ!」   (SE:逃走) クマ17「……流石に足は速いか……ん?これは……」 (SE:キラーンとか) クマ18「ホワイトシェルのイヤリング、か……ククク、落しモンだぜ、お嬢。 届けてやるさ……。     全力で、な」   (SE:走り去る足音)