A:男。軍人。真面目だが、思いつめすぎる傾向がある。故郷に恋人を残してきた。戦争で右腕を失った。 B:男。軍人。口調は軽く、不真面目に見えるが、真摯な人。戦争で視力を失った。 A「……う……うぅ、……ッ……」 B「お目覚めかい? 相棒。……どうだ、具合は」 A「…………吐き気がする。胃がひっくり返ったようだ……」 B「そりゃよかったな。なンにも感じなかったら、そりゃ、死んでるって事だぜ、アンタ」 A「…………軽口を……つッ……!」 B「やっぱり痛むか……右腕は」 A「ああ……痛む。……痺れるようだ。腕だけ、何処かに放り出されたような……」 B「ような、じゃ、ねェけどな」 A「……ああ。そう、だな………ふぅ………私は、どれほど眠っていた? 今は、何時……」 B「それなら、こっちのポケットに懐中時計が入ってる。見てくれ」 A「ああ。……5時……27分。もうすぐ、夜明け、だな……」 B「日の出は? 見えるか?」 A「……」 B「……どうした、黙っちまって」 A「何故、それを私に尋ねるのだ」 B「……」 A「時計も、朝日も……自分で見れば、確認できるだろう? それを、何故……」 B「…………ッ」 A「お前、まさか……目を……ッ!? ……ッ、痛ッ……!」 B「俺の事は気にすんな。それより自分の事を心配しな。待たせてるんだろ、大切な人を」 A「! ……あ、ああ」 B「だったら。抱きしめられるように、もう片方の腕を大事にしろよ」 A「……ッ」 B「俺には、もう。……見るべき顔も、ないんだからな……」 A「……なん、だって?」 B「アンタが寝てる間に報せが届いたんだ。俺を待ってる奴は、もういない」 A「では…………君の……君の、大切な人は……!」 B「……結果的にそうなっちまっただけさ。運命ってヤツは残酷だな。俺たちの与り知らねェ所で、勝手に事を進めやがる」 A「……くそッ! 私達は……私達は、一体、……何の為に、戦ったというのだ……!? こんなものは、勝利でも敗北でもない! ただの……絶望じゃないか……!」 B「……絶望じゃ、ないさ。…………アンタの大切な人は、まだ生きてる。なら……希望は、あるじゃねえか」 A「…………ッ」 B「…………幸せになれよ、お前らは。平和な世界で、な」