チョコレート、温めますか? 男「……うわぁ、ほんとにチ○ルチョコねぇし……」 女「いらっしゃいませー」 男「ご機嫌ですね」 女「ふふ、わかります?」 男「わかるけど、理由は聞きたくないですね。はい」 女「ピッピッと。355円になりますー」 男「はい、355円」 女「……」 男「……ふっ」 女「じゃあ、こちらのダー○チョコ温めます?」 男「温めませんよ。じゃあ、ってなんです」 女「まだまだ寒い夜は続きますよ?」 男「どろどろのチョコは嫌です」 女「ほら、これちゃんと紙のトレーついてますから、こぼさないように持って帰ればそのまますすれるかも……?」 男「そんなことをするくらいなら家に帰って温めますから」 女「え、チョコレート温めてすするんですか?」 男「やんないけど」 女「……それにしてもこんな日に自分でチョコ買うなんて寂しい人ですね」 男「それは、……ほっといてくださいよ」 女「ちーん」 男「なんだと、いつのまにっ!」 女「はい、これ」 男「……なんですか、これ? 熱くはないみたいですけど」 女「チョコレートです」 男「……え、ほんとに?」 女「はい。あ、ちなみに義理チョコなんかじゃないですー。……その、よかったらここで味見してみてくれません? ……感想、訊きたいです」 男「ここでですか?」 女「はい。お願いします」 男「……いただきます」 女「じーっ」 男「(もぐもぐ)……」 女「あ、食べた」 男「(もぐもぐ)へ?」 女「てんちょー、この人お店の商品食べましたー。どろぼーですー」 男「え、え、ちょっと待って」 女「……冗談です」 男「やめてくださいよ、焦るじゃないですか……」 女「腕」 男「へ?」 女「……いつまで私の腕を握っている気ですか?」 男「え、……あぁ、すみません」 女「……」 男「……」 女「……チョコ、おいしかったですか?」 男「はい、結構いい感じですよ」 女「そうですか、いい感じですか」 男「いい感じです」 女「それはよかったです」 男「よかったですか」 女「ええ、よかったです」 男「……あ、ありがとう、ございました」 女「いえ、そんな。……私の方こそ、……ありがとうございました」 男「……」 女「……」 男「……ねぇ、一つ訊いてもいい?」 女「どうぞ」 男「なんでこのタイミングでレジ打ちしてんの」 女「……私は今日、あなたに二つの嘘を吐きました。なんで今から本当のことを言います」 男「……唐突ですねぇ。……とりあえず、聞きましょう」 女「一つ、店長は今、店にはいません」 男「はいはい、呼んでもきませんでしたしね」 女「一つ、このチョコレートはこのお店の商品です」 男「……ん?」 女「がらがらちーん。1260円頂きまーす」 男「くそ、やられた。そして地味に高いっ」 女「私もそう思います。でもこれ300円くらいまで値下げされたら、ちょっと買ってみたいなーって、思いません?」 男「それがなにか?」 女「いえ、これおいしそうだから、明日以降値下げされたら買っちゃおうかなーって考えてたんです、私」 男「それで味見をさせたと」 女「にっこり」 男「絶対払わねー」 女「まぁまぁ、これあげますから」 男「え? なにこれ」 女「ほら、今日は何の日でしたっけー?」 男「……今度は本当?」 女「……義理ですよ?」 男「……はぁ、そうですか。はぁ」 女「にこ」 男「……わかりましたよ。払います」 女「お買い上げありがとーございまーす」 男「はい、1300円」 女「ちーん。そうくると思って40円温めておきましたぁ」 男「油断したっ! やめて! 鍋つかみを装着するのは、やめて!」 女「まーまー、遠慮しないで」 男「あっつ!」