『夢の終わりに』 将軍「私は、夢を見ていた。かつて仕えた我が主…かつて仕えたかの王城。    その栄光が劫火に焼かれ、黒煙と共に朽ちてゆく…    剣の腕も忠誠も、それを止める役には立たなかった。    私はただ、両の眼から溢れる涙の向こうに、戦いの終わりを見ていた――――」 部下「将軍!敵の軍勢は目前に迫っています!どうか、退却のご指示を!」 将軍「…ならぬ」 部下「なぜです!このままでは我が軍の壊滅は明白!一刻も早く退却し、戦線を立て直すべきです!」 将軍「もうよいのだ。お前にもわかっていよう、もはや戦いの趨勢は決した。    今退き、最後の戦いに備えた所で、我らの敗北は変わらぬ」 部下「ですが…では、どうなさるのです?」 将軍「私はここに残る。我が王国の最後の砦となって、少しでも長く敵の足を止めて見せよう」 部下「死ぬとおっしゃるのですか…!?」 将軍「たとえ一人でもな。志を私と同じくする者は残れ、そう兵たちに伝えよ。    命が惜しい者は逃げるがいい。恥じることはない」 部下「一体、どうして…」 将軍「私はかつて、主を失った。生きる意味も誇りもなくした。    そして私は新たな主を得た。もう、主を差し置いて生きながらえるつもりはない」 部下「…私も残ります。将軍とともに、ここで果てる覚悟です」 将軍「いいや、お前には役目がある。直ちに城へと戻り、国王陛下に    落ちのびるよう進言致すのだ。我、敵を阻むこと叶わず、我が軍敗れたり…とな」 部下「…将軍の最後の忠義のあかし…必ずお伝えします」 将軍「それから…もうひとつ」 部下「は」 将軍「ありがとう、と伝えてくれ、我が主にな」