下校中 バスは静かに、終点へと滑り込む。 とても賑わっているとはいえない、さびれた田舎町。 ここから家までは、さらに自転車で2キロほどある。 そこまで行くと、もう陸の孤島といったほうがいいかもしれない。 実際、僕の住む村は、海と山に挟まれている。 バスで40分、自転車で10分。 気の遠くなるような距離を僕は毎日通学している。 だが、この時間。 自転車での10分間。 僕はこの時間が大好きだ。 適度に疲れた体を、夕方の涼しい空気に浴びせる。 するとなぜか、澄み切った気持ちになるのだ。 考え事をするには、ちょうどよい。 だが、心なし、時間が足りない。 そんな贅沢なことを心のどこかで思いながら、僕は帰路に着く。