日高亮 でかい 俺様キャラ 小林純 ちいさい  芸術家気質、ちょっと神経質? 石田 委員長 噛ませ 小林母 おっとり系美人 日高母 バリキャリ 幼小林 ちょっと静かな可愛い子 幼日高 人見知り 通行人 ヤンキー 男 ガチホモ、優男タイプ 日高01「アイツと出会ったのは、いつのことだったろうか。    たしか、小学校にも上がる前の事だった気がする」 日高02「あの頃のあいつは、女の子みたいで。    髪も少し伸ばしてたし、格好は当然のように女の子のそれだった    ……まぁ、女の子みたいなのは今でも一緒だけど」 日高03「初めてあった日のことは、今でも鮮烈に思い出すことが出来る」 小林母01「今度隣に越してきた小林です。よろしくお願いしますね」 幼小林01「よろ、しっく!」 日高母01「こちらこそ」 幼日高01「……!」 日高母02「ほら、亮挨拶なさい。もう、ごめんなさいね」 日高04「千紗奈さんの趣味。フリルをふんだんにあしらった甘ロリのドレス。    その襞の一つ一つの影すらも、俺は頭の中に思い描ける。    そして、それを着せられた、西洋人形のような純の顔も」 日高05「それが、俺の、初恋だった。    ――初恋は実らない。そのジンクス通りなのかどうかは、今でも未だわからない」 日高06「だって、俺は――」 がちゃん、とドアが閉まる(1のを流用すべき) 日高07「……純」 石田01「あれ……完全に誤解してるよね」 日高08「誤解?」 石田02「見られてたんだよ。私たちの」 日高09「……あの時のか」 石田03「実際は手ひどくフラれたっていうのにね」 日高10「でも、それでどうしてあそこまで」 石田04「もう、鈍感だなぁ」 こつん、と石田が日高の額を叩く 石田05「ま、実際どうなのかはわからないから言わないけどね。自分で考えること。    俺様神様日高亮様な日高くんなら、すぐに答えがわかるはずだよ」 日高11「んなこと言われてもなぁ」 日高、頭を掻く 困った風にしている日高の元に、階下から小林母登場 小林母02「どうだった?」(声を潜めて) 日高12「だめでした」 小林母03「そう……」 小林母04「(唸り声と溜息)。……二人とも今日はありがとうね。お茶でも一杯どう?」 日高13「いただきます」 石田06「いただいていきます」 小林母05「それじゃ、行きましょう」 小林母、石田階段を降り始める 日高、階段を一歩降りたところで足を止めて振り返る。 日高14「何も言わずに佇む扉が、強い拒絶を主張しているようだった」 日高、階段を降りていってフェードアウト 日高15「そうして、俺はあいつのいない日常に投げ出された」 日高16「空席はたった一つ。ただ友達が一人欠けただけのこと。    別に死んだわけじゃない。ただ、学校に来なくなっただけ。    会おうと思えば幾らでも会える。    それなのに、寂寞(せきばく)が強く心の中で泣き声を上げていた」 日高17「まるで、心に穴でも開いたようだった。こんな感覚、初めてだった」 日高18「俺だって、人並みの人生を歩んできて、喪失には何度か立ち会ったことがある。    けれど、この空虚さは、今まで経験したどの喪失とも違う」 日高19「帰って、くるんだよな……」 日高20「長いこと、座られていないあいつの席に触れて、そう呟きを零す。    たっぷりと詰め込まれていたはずの教科書は、影も形もなかった。    そのことが、嫌な未来を暗示しているようで、酷く怖ろしかった」 日高21「日にちだけが過ぎていく。あいつは隣の家にいるというのに、俺はあれ以降、ただの一度も敷居を跨ぐことが出来ていなかった」 日高22「あれは誤解だった。そういうのじゃない。説明することは一つしかないのに。    俺は、何も出来ないままだった」 日高23「それに、説明してどうするというのだ。    ――俺は、どうしたいんだろう」 日高24「欲しい答えは湧いてこない。    このまま永遠に問題が解けなくて、俺は二度とあいつに会えないんだろうか。    そんな風に考え始めた俺を、突き動かしてくれた人が居た」 石田、日高に強烈なビンタをかます 石田07「いつまでうじうじ悩んでんの!    いつもの俺様っぷりは何処に行ったのよ。    私の好きな日高亮はそういう人じゃなかったでしょう?」 日高25「石田……」 石田08「笑え、笑いなさい! 高らかに、バカみたいに大仰に笑いなさい」 日高26「そんなこと言われても」 石田09「いいから、笑え!」 日高27「う、わ、わはは」 石田10「もっと、もっと!」 日高28「はは、ははは、あははははははははははははははは!    ……はぁー」(笑いはぎこちないところから初めて綺麗な高笑いになるように 石田11「どう? 憂鬱な気分は吹っ飛んだ?」 日高29「……ああ、ぶっとんだよ」 石田12「それで、どうするの? どうしたいの?」 日高30「まずはがつんと一発ぶん殴る」 石田13「……過激ね」 日高31「気合い注入って奴だよ。お前のビンタと一緒」 石田14「まぁ……続けて」 日高32「誤解を解いて、あとは……まぁ、その場の流れだな」 石田15「行き当たりばったりな……でも、上手く行くと良いね」 日高33「上手く行くに決まってんだろぉ? 俺を誰だと思ってる」 石田16「俺様神様」 日高34「日高亮様よぉ! あははははは」 日高35「決まればあとは実行するだけ、俺は隣家の敷居を跨いだ」 日高36「同年代、しかも同じ学校に通う子供がいるということもあってか日高家と小林家の交流は深い。    両親が二人ともワーカーホリックだったということも手伝ってか、俺は頻繁に小林家に預けられた。    だから、小林家には日高家の鍵が置いてあるし、逆もそうだ。    近所付き合いが絶滅しつつある現代で、非常に珍しい関係といえた」 日高37「そんな見慣れたはずの小林家は、混乱に包まれていた」 ばたばたと小林母の走り回る音 ものをひっくり返すような音が連続した後、廊下に飛び出してくる 小林母06「ああ、亮くん!? 純が、純が……」 日高38「純が、どうかしたんですか!」 小林母07「いなくなっちゃったのよ! 買い物から帰ってみたら、部屋のドアが開いてて、中はもぬけのからで……。 行く前はちゃんといたのよ! でも、でも……。     あの子、酷く落ち込んでいたみたいだし……ね、ねぇ、変なことにはならないわよね?」 日高39「――その前に、俺が見つけます」 小林母08「え……?」 日高40「千紗奈さんは、家の近くを探してください! 俺は、心当たりのある場所を全部当たります!」 小林母09「亮くん!」 亮、小林家を飛び出す。 日高41「いついなくなったのかはわからないが、買い物から行って帰るまでの間に脱走したのだ、それほど遠くまでは行っていないだろう」 日高42「取っててよかった原付免許!」 原付の駆動音 日高43「待ってろよバカ野郎。てめぇの頬ぶち抜いてやらぁ」 原付の走り去る音フェードアウト 足音と繁華街の喧噪(喧噪は少し遠くに) 小林01「夕日が沈み行く街道を、歩いて、歩いて。    目的地なんてない。ただ衝動的にあの場所を抜け出してきてしまっただけだ」 小林02「さ……むい……」 小林03「どうしてか、自分は昔させられていた格好をしている。    今でも時折、母さんがどうしてもと言うときにはさせられているけど」 小林04「はは、女の子だ」 小林05「ガラス張りのビルの壁面に映った自分の姿に、そう言葉を零す。    自分がもし、産まれたときから女の子だったらのなら」 小林06「――僕は、あの場所にいられたのかな」 小林07「脳裏にちらつくのは、茜色の舞台に立つ二人の姿。    幾度と無くフラッシュバックする中で、石田さんの姿が、自分の姿にすり替わる」 小林08「そこにいるのが当然なのだというような顔をした、女の自分に」 小林09「はは……」 小林10「馬鹿げた妄想だ。男の自分が、あそこにいられるはずがない。    自分は男で、友達で、ちょっかいを出し合う関係で。それ以上じゃない」 小林11「――自分は永遠に友達のままだ。特別には、なれない」 どん、と小林、通行人にぶつかって倒れる 小林12「うぅ……」 通行人01「痛ってなぁ、ちゃんと……前見ろよ、あぶねぇから」(最初は抗議しようとして激しく、途中で小林の惨状を見て、忠言に留める) 小林13「すいません」(消え入るような感じで) 小林14「汚してしまった。母さんの大好きな白いこの服を。    ……けれど、まぁ、別に構わないだろう。もう、どうだっていい」 小林15「気が付けば、景色は繁華街の中にぽっかりと空いた穴のような、公園に変わっていた。    少しでも近づけばその喧噪が聞こえるのに、この場所はあまりにも空虚だ」 小林16「それでもぽつぽつと人がいるのだから、もしかしたらここは、喧噪に倦んだ人たちが逃げる為の場所なのかもしれない    僕もまた、逃げてきた一人だ」 小林、砂地の公園に足を踏み入れる。 少し歩いて、並べられているベンチに腰掛ける 小林17「植えられた木々と、林立するビルの隙間から覗く、藍色の空を仰ぎ見る。    光に溢れたこの場所では、星は見えない」 一旦フェードアウト 男01「……ねぇ、君、可愛い格好してるね」 小林18「……ぅ」 小林19「誰かが話しかけてきた、誰だろう。どうして僕に話しかけるのだろう。    こんな無価値な僕と話して何が楽しいのだろう」 男02「そんな格好してるけど、男の子、だよね? 流行の男の娘って奴かな」 小林20「……?」 男03「まぁ、どっちだっていいや。ね、僕と楽しいこと、しない?」 小林21「楽しい……こと?」 男04「そう、気持ちいいし、適度な運動にもなる。どう?」 小林22「……」 男05「見たところ、何かあったみたいだし、そういうときはさ、身体動かして忘れちゃおうよ。   ――僕が忘れさせてあげるからさ」 小林23「……いいよ」 小林24「この男が何の目的で僕に近づいてきたのかは知らない。どうでもいい。    ただ、忘れさせてくれるなら、それでよかった」 男06「それじゃ行こうか、マドモワゼル?」 小林25「悪魔の甘言と知っていて、僕はその手を取ろうとした」 遠くから近づいてくる原付の音 日高44「――純!」 小林26「……ぇ?」 原付が乗り捨てられる。エンジン音だけが響く 男07「な、なんだ君は」 日高45「邪魔だおっさん。ここからは俺とこいつだけの時間だ」 男08「く、お、男がもういるならそうだと言えばいいのに! ふん、時間を無駄にした……」 憤然と男が立ち去る 日高46「おら、ちょっと顔上げて歯ァ食いしばれよ」 小林27「どうして……来たの」 日高、小林の顔を殴る 小林28「あぐぅ! な、何するんだよ」 日高47「足りなかったか? だったら何発でも殴ってやるよ。気合い注入って奴だこらァ!」 日高、小林の顔を殴る 小林29「……! なにするんだよ、このノッポが」 小林、日高の顔を殴り返す。 日高48「そう、それだよ。てめぇ、何勝手に誤解して突っ走って悲劇のヒロイン気取ってんだよチビが!」 日高、小林の顔を殴る 小林30「チビ、って言うんじゃねぇ! ァんだよ、何を誤解したって言うのさ! 君と石田さんは付き合ってる、それが現実だろ!」 小林、日高の顔を殴る 日高49「そうじゃねぇつってんだよチビ!」 日高、小林の顔を殴る 小林31「じゃあ、どうして抱き合ってたのさ!」 小林、日高の顔を殴る。 日高50「詫びだよ! あいつを手ひどくフッたなぁ!」 日高、小林の顔を殴る 小林32「……! それじゃあ、僕は、道化じゃないか」 日高51「ああ、そうだよ。そう言ってんだよチビ!」 日高、胸ぐらを掴んで小林を持ち上げる 小林33「ぐ……」 日高52「いいか、耳の穴かっぽじってよく聞けよチビ。一回しか言わねぇからな」 小林33「なんだよ」 日高53「俺が、俺が好きなのは――」 日高54「お前だよ」 小林34「そう聞こえた瞬間、僕は全力で殴り飛ばされていた」 小林、身を起こしながら 小林35「は……? な、なに言ってんの?」 日高55「よく聞いておけ、つったろ?」 小林36「ちゃんと聞いたよ。でも、そ、それって」 日高56「好きつってもLikeだからとかたりぃ事は言わない。I Love You.月が綺麗ですね、だっけか? そういうことだよ」 小林37「男に言うか、フツー」 日高57「そういうお前だってそうなんだろ。涙目だぞ」 小林38「うるさい」 とん、と日高の胸を叩く 小林39「僕が、この一月どんな気持ちでいたと思う」 日高58「しらん」 小林40「君が、君が石田さんと付き合ったと思って、どんなに苦しかったと思う」 日高59「しらん」 小林41「僕の出席日数返せよ……」 日高60「……一緒に補習にゃ出てやるよ」 小林42「一緒に、いてくれるの?」 日高61「ああ、ずっと、ずっとな」 小林43「ん……ふぅ……」 日高62「ふ……く、ふぅ……」 小林44「そうして、僕たちは、小さな公園でキスをした」 小林45「その後僕らは、亮の原付を押しながら家まで帰った。    久しぶりの会話は弾みに弾んで、哀しみなんて何処かに吹き飛んでしまった」 小林46「ねぇ、僕の何処がそんなによかったの?」 小林47「いつから好きだったの?」 小林48「僕の質問に、亮は頬を掻いて、ただ一言だけ答えてくれた」 日高63「だって、お前が俺の初恋だから」 小林49「初恋は実らないと言うけれど、そんなことはない。    こうやって実ることもある。実までには巡り巡る必要があったけれど……」 日高64「お、満月だぞ」 小林50「君と居ると、月の綺麗さも万倍だよ」 日高65「月が綺麗ですね、だな」 小林51「あはははははは」 日高66「ははははははは」