あの頃の海 どうやら私は帰ってきたようだ どのようにして帰ってこれたのか、実際にどのくらいの間あの場所にいたのか 帰ってきてから当時の記憶はまったくもってうすぼんやりとしか浮かんでこない あれは夢だったのだろうか 気が付いたら例のヘリコプターの中だった あれは本当に起こったことだったのだろうか それともただの夢だったのだろうか その答えはわからないが、ただ、今はこの私が生きてきた世界に帰ってきた 何もかもが懐かしいような新鮮なような不思議な感覚だ ・・・そうだ、海に行こう 私は思い立ってその足のまま海へと向かった ・・・海は黒く、淀んでいた そうかあの頃の海はもうないんだ 私は悲しいような悔しいようななんともいえない気分になってしまった そううすぼんやりとしか浮かんでこない景色の中でも海は あの頃の海はきれいだった 時代は戻らない 汚れてしまった場所をきれいにすることすら放棄している世界に絶望し涙がこぼれた 私はまたあの時代に戻ろうと動くかわからないヘリコプターに乗り込み そして飛んだ 私はあの海に戻れたのだろうか あの世界は本当に存在していたのか 私の命はもう消える