2人 伝説 愛することは信じること 遠い西の砂漠の国に、一人の王子様がおりました 空に輝く星星に倣って、鷹と名付けられた彼はとても勇敢な戦士でした ひとたび戦場に出れば、右に出る者はおりません 腕を振れば、それが相手にとっての地獄。どんな分厚い鎧でも、彼の前では歯が立ちません 一騎当千、天下無双の剣士でした そんな鷹には、愛する番(つがい)がおりました 砂漠の夜に花を咲かせる、月下麗人。白花(しらはな)の姫 それはそれは美しい姫でした 無双の鷹も、彼女の前では爪を隠し、歌に酔います その歌の美しさも、姿に勝るとも劣りません 鷹が天下無双の剣士ならば、花は天上より舞い降りたる天女でしょう それほどまでに相応しい二人でしたが、二人はやがて引き裂かれます 鷹は確かに天下無双でしたが、一人では戦争には勝てません 風説の流布、他の王子の裏切り、王の耄碌…… 人から隔絶しすぎてしまった鷹は、他の人間にとっては目の上のたんこぶでしかなかったのです そうしてじわりじわりと真綿で首を絞めるように、国との縁を切られていく鷹は、やがて一人砂漠に投げ出されます 命無き砂漠は無情でした 水の一滴すら彼に与えず、極寒と灼熱でもって彼から全てを奪っていくのです けれど、鷹は諦めませんでした 水が無ければ血を飲みました 寒さにも、熱さにも心折られることなく 決して悪態など吐くことなく、ただただ自分に誠実に そうして鷹は、無限の砂漠を彷徨い歩いたのです 斯くして日は巡り、幾星霜―― 年老いた鷹は、痩せ細りながらもどうにか自分の国へと帰りつくことが出来ました けれど、そこにあるのは無限の砂だけ あれほどの栄華を誇ったはずの鷹の国は、跡形もなくなっていました それでもたしかに、その場所が鷹の国なのです 花と共に歌い、共に踊ったあの場所なのです 鷹は探しました。美しいあの花を探しました 真っ白な月が照らす下で、鷹は花びらを光らせる花を探しました そうして、やがて 二人は再会を果たします 花は確かに鷹を待っていました あの場所で、いつも歌を歌ったあの場所で待っていたのです 月下に花を咲かすように、その白花を輝かせて