◎主要人物 男A ・・・ 元ガキ大将。女Aの事が気になる。社会人 女A ・・・ 男勝りキャラ。いつも男Aに弄られて口喧嘩をしてる。ただし、喧嘩する程仲が良い。面倒見の良いタイプ。大学生 男B ・・・ ハーレム物のラノベ主人公タイプ。大学生 女B ・・・ 肉食系女子。男Bをからかって遊ぶ。既婚、専業主婦 女C ・・・ TVでも人気の美女アスリート。大学生。クールキャラ ◎舞台 成人式後の同窓会。チェーンの居酒屋 ◎席(空いてる所にはモブが座ってます) 幹事 女A 女C 男A 男B 女B 以下台本 幹事 「それじゃ、我々東中三年二組一同の久し振りの再会と、輝ける未来を祝して! 乾杯〜っ!」 一同 「乾杯〜っ!」 女A 「ねぇ、それとってー」 男A 「肉?」 女A 「いや、そこのサラダ」 男A 「ぼんじり?」 女A 「サ、ラ、ダっ!」 男A 「ああ、唐揚げ?」 女A 「違うっ!!お前には私が肉食獣にでも見えるのかぁ!?」 男A 「確かに・・・。言われてみれば、お前ってチーターとかライオンっぽいかもな」 女A 「いやいや、そこは猫っぽいでいいだろ!なんでわざわざ猛獣にする!私だって、これでも女の子だからね!?」 男A 「ああ。言われてみれば、お前って女の子っぽいか――」 女A 「言われなくても女の子じゃボケぇぇ!」(男Aの台詞を遮る感じで) 男B 「ねぇ、唐揚げにレモンかけていい?」 男A 「ダメっ!」 女A 「ダメっ!」(男Aとハモる) 男B 「お、おう・・・」 女B 「ふふっ。私は好きだよ?レモン」 男B 「よかったぁ。揚げ物にはレモンでさっぱりってのを、ちゃんと理解してくれてる人がいて安心したよ〜」 女B 「私の場合はかけるんじゃなくて、そのまま食べる派なんだけどね♪」 男B 「ああ、そっちか・・・。たまにいるよね、そういう人も」 (女B、レモンをかじる) 女B 「うん。おいしい。試しに食べてみる?私の食べ掛けだから、間接キスになっちゃうけど・・・」 男B 「えっ・・・」 女B 「ふふっ。冗談だよー?はい、新しいのあげる♪」 男B 「お、おう・・・」 女B 「あのくらいで動揺しちゃうようじゃ、もしかしてまだ童貞クンなのかなぁ〜?」 男B 「は?え?べ、別にいいだろ!そんな事、どうでも・・・」 女B 「やだ、カワイイー♪」 男B 「ちゃ、茶化すなよ・・・」 女B 「ねぇ、私が貰ってあげよっか・・・?ド・ウ・テ・イ♪」(耳元で囁く) 男B 「ふぇ?あ、そ、その///」 女B 「ねぇ・・・、どうなの?それとも私じゃ嫌かなぁ・・・?」(男Bの腕に胸を押し付け、太股を人差し指で撫でながら、エロく囁く) 男B 「あ、ふっ!そ、そんな、な、な、なっ――」 ピコンピコン、ピコンピコン(店のドアが開いた時の音) 店員 「いらっしゃいませー」 女C 「すみません、団体で予約している――」 幹事 「おっ、来たか!我東中の誇りよ!」(女Cの台詞を遮って) 女C 「久し振り。相変わらず元気みたいで嬉しいわ」 幹事 「まぁね。元気だけが取り柄だからさ。それより、皆待ってんよ」 女C 「ええ」 幹事 「おーい、皆!我東中の出世頭様の登場だぞー!」 男A 「おそーい!待ちくたびれたぞ、未来の金メダリスト!」 女A 「久し振りー、ほら、こっちこっち!ここ座って!」 女C 「ええ。そうさせてもらうわね」 男A 「とりあえず、生でいいか?それともカシオレとか?」 女C 「そうね。なら、カシスオレンジを貰おうかしら」 女A 「おっけぇ。あ、ついでに私の分も頼んどいて」 男A 「唐揚げ?」 女A 「何をどう間違えたら、この流れで唐揚げに行きつくのよ!このどアホっ!」 男A 「ヘイヘイ。じゃ、店員さん、カシオレ二つと生一つ追加で」 女C 「二人とも、お久し振り」 男B 「おう・・・。久し振り」 女B 「久し振りぃー♪本当に綺麗になったよねぇ。超羨ましい!」 女C 「そんな事ないわ。それに、あなたもとっても綺麗よ」 女B 「TVで人気の美女アスリートに褒めて貰えるなんて、お世辞でも嬉しいよん♪ふふっ」 女C 「それで、二人はお付き合いをしているのかしら?」 男B 「え?」 女C 「あら、違うの?人目も憚らず、そんなにくっついている物だから、てっきり・・・」 男B 「ふぇ?いや、違う!そんなんじゃないって!」(慌てて女Bと離れる) 女B 「あっ、もぉぅ・・・」 女C 「そう。案外お似合いのカップルなのかもと思ったのだけれど・・・」 女B 「だってさ!どうするぅ〜?うりうり」 男B 「ないない!」 女B 「もぅ、ノリ悪いぞー!ほら、飲め飲め、もっと飲みなさい!」 男B 「うわっ、こら!ビール溢れちゃうって!」 女C 「うふふ。楽しそうで何よりだわ」 男B (数年ぶりに見た彼女の笑顔は、少しだけ寂しそうに見えた。僕自身の願望がそう思わせた、ただの勘違いなのかもしれない。けど、どこかで、そんな気がした) 二時間後 幹事 「はーい、皆様!宴もたけなわではございますが、ここで一旦お開き!二次会は二丁目のカラオケなー。ちょっと歩くけどパーティールーム取ってあるからぁー!そんじゃ、移動よろしく!」 女B 「さーて、じゃ、私は帰るから、皆楽しんでおいでねぇ」 男B 「あれ?お前帰るの?」 女B 「うん。旦那とガキが待ってるからね。あんまり遅くまでは――」 男B 「ええ!?お前結婚してたの!?しかも子供いんの?」 女B 「あれ〜、知らなかった?あっ、もしかして、さっきの本気にしちゃってたぁ?ゴメンゴメン♪」 女B 「・・・まぁ、一回くらいなら、別に構わないんだよ?童貞クン♪」(耳元で囁く感じ) 男B 「へっ///」 女B 「アハハ♪冗談、冗談!じゃ、またね〜」 男B 「クソ・・・。あのヤロウ、男の純情を弄びやがって・・・」 女C 「残念だったわね。童貞を捨てられるチャンスだったのに」 男B 「はぁ・・・。お前まで何を言うか。あ、そういやお前、二丁目のカラオケ屋の場所知ってるのか?」 女C 「いいえ、残念ながら。中学生の頃はまだ、二丁目にカラオケなんて無かったのだし」 男B 「だよな。なら、一緒に行こうぜ。案内してやるよ」 女C 「そう。助かるわ」 騒がしい集団から少し離れて、夜道を歩く二人 男B 「そういや、おめでとう。オリンピック、内定出たんだろ?」 女C 「ええ。ありがとう」 男B 「でも、お前は本当凄いよなぁ。子供の頃からの夢だったんだろ?なかなかいるもんじゃないよ、子供の時に見た途方も無い夢を追いかけ続ける事が出来る奴も、それを現実にしちまえる奴も」 女C 「そうね。でも、私だって何度も挫折して、諦めそうになったわ。その度になんとか踏ん張ってここまで来たの。夢を叶える人と諦める人の違いなんて紙一重よ。薄い紙一枚分の壁を、疲弊した体で突き破れるのか、それとも、目前で止めてしまうのかの違い」 男B 「なるほどね。夢を叶えた奴が言うと説得力があるねぇ、やっぱり。でも、お前が挫折なぁー。中学時代から常にトップランカーだったお前がなぁ。意外なもんだ」 女C 「そうね、せっかくだから、私が経験した中で一番辛かった時の事を話してあげる」 女C 「あれはね、私が中学卒業間近の冬だったわ」 女C 「あの時の私は、地方の名門校からスカウトされて、スポーツ推薦で進学先も決まっていたの。けれど、そのせいで皆と離れ離れになるのがとても寂しかったのを覚えているわ」 男B 「それが人生最大の辛かった思い出?」 女C 「せっかちね。まだ話は終わってないわよ」 男B 「ああ、そう」 女C 「まぁ、それでも、夢の為だって割り切っていたわ。それに、今生の別れって訳でもないのだし、と」 男B 「ふむふむ」 女C 「ところが、ある日事件が起きた。とある男子が私の事を好きだと告白して来たの」 男B 「・・・おい」 女C 「それはもう、冴えない奴でね。告白の時も、オドオドして、なかなか本題に入ってくれなかった」 男B 「そ、そうだっけか・・・?」 女C 「ええ、そうよ。それでね、三十分以上かけてやっと言ってくれたのだけど、その男子は肝心な所を噛んでしまったわ」 女C 「・・・貴女の事が、しゅきでしゅた」 男B 「や、やめろ、恥ずかしい・・・」 女C 「しゅき――」 男B 「止めて下さい御願いしますぅ!」(女Cの台詞を遮って) 女C 「それでね、よっぽど恥ずかしかったのね。告白を終えると同時に、その男子は逃げるように走り去っていったわ」 男B 「うぅ・・・。今もこの場から逃げ出したい・・・」 女C 「で、その日の夜、その男子からメールが来たの。私が地方へ行ってしまう事を知って、どうしても気持ちを伝えたかったんだ、って。迷惑なのもわかっているけど、気持ちにケリを着けたかったんだ、って」 男B 「も、もうやめて下さい、御願いしますぅ・・・」 女C 「それに、さっきの告白は無かった物だと思って忘れてくれとも書いてあった。本当、冴えない奴よね・・・」 女C 「それで、そのメールを読んで、私も、告白の事は無かった事にしようと決めたの・・・」 女C 「そうして、卒業した私は地方へと旅立った。沢山の後悔と矛盾した衝動を抱えながら、ね・・・」 女C 「競技なんてやめて、実家に帰りたいと思ってしまう事が何度もあった。傍にさえいられるのなら、あの男子は私の事を諦める事は無かったはずだと。競技よりも、オリンピックの夢よりも、思春期の女の子にとって、好きな人と一緒にいたいという想いは重大な物だったのよ」 男B 「え・・・。だって、お前は俺の事なんか・・・」 女C 「好きだったわ。きっと、貴方が私を好きになるよりも以前から、私は貴方が好きだった」 男B 「お前・・・」 女C 「でも、私には競技があったし、何より貴方は人気者だったから、私にはチャンスが無いと諦めていた・・・」 女C 「でもね、ある日知ってしまったの。二人は両想いだったんだって。私が望めば、諦めていた全てが手に入るんだって、知ってしまったの」 女C 「とても可愛い告白だった。一生懸命、勇気を振り絞って伝えてくれた、貴方らしい言葉だった。逃げてしまったのは頂けないけれど、それでも私は幸せだった。でもね・・・」 男B 「ゴメン」 女C 「遅すぎたのよね。あの時は、もう全てを決めてしまった後だったから。それに、あのメールを読んだら、貴方も私を諦めてしまった後みたいだったから・・・。私も、諦めてしまったのね・・・」 女C 「それから暫くは本当に辛かったわ。何をしていても貴方の顔が頭から離れなくて苦しかった。本当、余計な事をしてくれたわ・・・」 男B 「ゴメン・・・」 女C 「でも、全ては過ぎた事よ。こうして貴方に恥ずかしい思いをさせる事ができただけで、十分に元は取れたわね。ふふっ」 男B 「なぁ、もし――」 女C 「いやよ。とって付けたような嘘臭い台詞なら言わないで」(男Bの台詞を遮って) 男B 「そう、だよな・・・」 女C 「でも、そうね。もしもう一度、私にあの可愛いらしい告白の言葉を聞かせてくれる気になったのなら、その時は、・・・貰ってあげるわ。貴方の童貞」 男B 「へっ?お、お前は、なにを///」 女C 「ふふっ。冗談・・・、かな?」 男B 「かな?って、え?何?それどういう意味!?ちよ、ちょっとぉぉ!?」 女C 「もう、五月蝿いわね。少し黙りなさい・・・」 チュッ 男B 「ふぇっ・・・・?///」 女C 「ふふっ。私、先行ってるから・・・」 男B 「へっ・・・・・・?えーー!?」 男B (その日僕は、再び彼女に恋をした) おわり