主要人物 A ・・・ 大学生。流されるままの人生に不安と閉塞感を感じている。自分に甘い。童貞 B ・・・ 大学生。イケメン。色々と要領のいいタイプ。女好き。非童貞 C ・・・ OL。面食い。年下のイケメンが大好き。高校時代はギャルだった。今は一見清楚でおとなしそう D ・・・ 中年。童貞。会社の後輩女子社員に人生初の告白をするが玉砕。その後も未練タラタラのメールを送り、ストーカー扱いされて左遷が決まる 以下台本 「野生の雄」 A 「おはよう・・・」 B 「なんだよ、随分と元気ねぇな。月曜日からそんなんじゃ、今週末までもたねぇぞ?」 A 「いや、なんかさぁ・・・」 B 「なんか?」 A 「ほら、毎日同じ事の繰返しってーの?新鮮味に欠けるって言うか退屈っていうか・・・」 B 「ふーん。ようするにやる気が出ないと言う訳だ」 A 「はぁ・・・。俺達、何の為に生きてるんだろうな。ただ何となく学校行ってバイトして、いつものメンバーでダベって・・・。あー!もうダメ!俺、もうがんばれない・・・」 A 「なんかさぁ、生きる目的とかさぁ、楽しみとか、そういうのが欲しい訳よ。例えばゲームの主人公みたいに、悪の組織からヒロインを救いだす!的なさぁ・・・。この長い道のりを、迷わず進んでいける絶対的な指標や大義っていうのかなぁ・・・」 B 「朝起きたらベランダに気を失った美少女が!彼女は悪の魔術師に追われていたのだった!・・・みたいな?ははは。ないない」 A 「いや、割とマジで、突然空から降ってこねーかなぁ。俺のヒロイン・・・」 C 「きゃーっ!」 A 「ん?なんだ?」 C 「いやー!変態ー!!」 D 「ぶははははははははッ!何とでも言え、この雌豚がぁ。俺は自由なのだッ! 現世の呪縛から解き放たれた俺様には、常識も、法律も、通用しねぇッ!!」 C 「い、いやああ!」 B 「おい!アレ、不味いだろ!警察っ!」 D 「見るがいい、体制に飼い慣らされた豚共よ!これが自由だ!野生だぁ!フリーダムなぁのだぁ・・・!」 B 「も、もしもし!警察ですか?今、全裸に目出し帽を被った男が――」 C 「いやっ、来ないでっ!」 D 「あぁ・・・。なんという解放感。股の間で楽しそうに揺れるマイビッグサン!足の指と指の間には冷たい風がすり抜け、首輪を外されたこの喉は、驚く程によく通る・・・。ぬふっ、ぬっふっふっふっふ!」 B 「ええ、武蔵野市の・・・、はい、そうです!とにかく早く来て下さい!」 D 「エーデルワーイス♪エーデルワーイス♪たーら、ららら――」 A 「おい変態!そこまでにしときな・・・」 D 「何だ貴様・・・?お姫様を護る勇者にでもなったつもりか?ん?体制に与えられた浅はかな倫理観で俺様を凶弾しようとでも?くっくっく。お前の様な犬っころがこの俺様を、か・・・?ふっ、なんとも滑稽ではないか」 A 「滑稽なのはお前だろ!いい歳こいて露出狂かよ!リストラか?離婚か?童貞でもこじらせちまったか?ええ!?」 D 「ぐぬっ・・・。バカめ。俺様は本来在るべき姿を取り戻しただけだ。野生に生きる雄の姿をなぁッ!会社など必要ない!恋愛などくだらない!野生の雄は自由に狩り、自由に犯すのみッ!理不尽な暴力ですら、自由の前では正義となるのだッ!」 A 「いいぜ・・・。だったらその自由の代償・・・、テメェの体で払ってもらうぜッ!」 B 「よし、いけ、やっちまえ!って、はい!?ちょ、ちょっと、やめとけってば!」 D 「飼い犬風情が野生の獅子に勝てると・・・?ふん、いいだろう。これよりここはサバンナだッ!噛み殺されても文句はないな・・・?こい、駄犬ッ!」 A 「いくぜオッサン!テメェの脳天ぶっ叩いて、真の男の道筋を、真っ直ぐ一本通してやるよ!」 C 「何なの、この展開・・・」 A 「うおおおおおおおお!!」 D 「うおおおおおおおお!!」 D 「ふっ、ふっ、ふっ、ふっふっ・・・。まさか、この俺様が、な・・・」 A 「オッサン・・・。テメェは間違っちまったんだ。サバンナも人間社会も関係ない。ただそこに泣いている女の子がいるんなら、四の五の言わずに助けてやるのが雄の務めってもんだろ・・・?」 D 「ふん・・・。青いな、駄犬・・・。だが、その青さが懐かしい・・・」 A 「オッサン・・・」 D 「うっ・・・!ぐはぁッ!お、俺様はもう長くはない・・・。そうだ・・・今生の終わりに、1ついい事を教えてやろう・・・」 A 「やめろ、もう喋るんじゃねぇ!」 D 「正義の味方ってのはな・・・、確かに格好がいい・・・。きっと女にも受けるだろうさ・・・。ただし・・・、イケメンに・・・限・・・るッ・・・」 A 「オッサぁぁぁン!!」 C 「なにこれ・・・」 B 「さぁ?あ、そーいや大丈夫ですか?怪我とかその他もろもろ」 C 「ん?ああ、つーか別に・・・あらやだイケメン」 A 「え?」 D 「え?」 C 「あ、あの!助けて頂きありがとうございました!それで、その、よかったらお礼に――」 A 「へ?俺は?助けたの殆ど俺だよねぇ?・・・なっ!二人で何処行くのさ!ちょっとお姉さん?大事な事忘れてません!?貴女を助けた主人公様はここ!ここなんですよーッ!?」 C 「あーん♪怖かったよぅ・・・」 B 「もう大丈夫。後の事は警察に任せましょう・・・」 C 「いやーん♪任せる、任せるぅ」 B 「あははははっ」 C 「うふふふふっ」 D 「・・・な?」 A 「ぬおおおおおお!!」 -テレビのニュース- アナ 「本日、東京都武蔵野市で全裸に目出し帽を被った二人組の男が暴れまわるという事件が発生しました。なお、犯人は今だ捕まっておらず、警察は、周辺住民への警戒を呼び掛けています。さて、次のニュースです。春の訪れを告げるタケノコの新芽が――」 -薄暗い路地- 女子高生 「きゃぁー!変態っ!!」