「反逆のゲーム」 皇帝「よくやった、若き戦士よ!この度の戦功、他に比肩するものなし。褒めてつかわす」 戦士「……恐悦至極にございます。皇帝陛下に謁見できただけでも、命を張ったかいがあるというもの」 皇帝「そう堅くなるでない。欲しいものを申してみよ。望むままに取らせようぞ。金か、女か」 戦士「…陛下」 皇帝「うむ?」 戦士「私が望むのはたった一つにございます」 皇帝「聞こう」 戦士「陛下のおわす玉座。それ以外には何も」 皇帝「…余の玉座、とな」 戦士「陛下は老いられた。もはや国を統べるお人にあらず」 皇帝「余にはその器がない、というのだな」 戦士「そうだ!その玉座にふさわしいのは、私の様な戦士に他ならぬ!    我らはあなたの手となり足となり戦った。なのにあなたは戦場に姿さえ見せぬ。    金や女で人心を得ることはできよう。だが、我らはそんなものの為に戦場で血を流すわけではない!」 皇帝「ふ、自ら戦わぬ主君に払う忠誠などないということか。      だがどうする?今、余を殺さば、国が乱れるは確実ぞ。そうなればこの帝国は外敵に容易く蹂躙されよう」 戦士「…だが、許せぬ。私は、あなたのために死んでいった同志たちの無念を晴らさねばならぬ」 皇帝「無念、とな。ははは…」 戦士「何を笑う」 皇帝「…では、こうしよう。お前はこのまま我が兵として戦うがよい。お前の謀反の心は    余の胸の内に秘めておこうではないか」 戦士「な…何を言われる?」 皇帝「このまま戦い続け、我が帝国に仇なすものを全て排するのだ。そして外に敵がなくなったのち、    余を殺せ。余の玉座を望みのままに奪うがよい」 戦士「あ、あなたは…」 皇帝「さすれば、奪った玉座は安泰よ。勇敢なる戦士の統治により、帝国は平和を見る。    ただし、余とて何もせずに待っておるわけではないぞ。    余の巡らした謀(はかりごと)をくぐり抜け、余を殺すことができればの話だ」 戦士「…よかろう、あなたの言うとおりにしよう。この国のあらゆる外敵を、滅ぼして見せよう。    だが何故だ、何故今私を殺さない…?」 皇帝「余は待っておったのだ、この皇帝の座を望むものをな。自ら玉座を欲するものでなければ、    玉座を守ることは出来ぬ」 戦士「私を後継者にしたいということか!」 皇帝「その器かどうか見定めようというのだ」 戦士「…陛下、あなたは狂っている」 皇帝「狂った帝を討ってみせよ、若き戦士よ。そしてそののち、正しき帝となるがよい」 戦士「…失礼する。その首、今は預けておこう。全ての戦を終えたのち、また」 皇帝「ふっふっふ、はっはっはっは…!どう転ぶにせよ、面白い座興となろう…!!」