読み手指定企画    掛け合い台本 「時をかける和子」 ぺペロンペルォン・チンチーノ キャスト 芳山和子 ラベンダーの香りでタイムスリップする人      父    和子の父、いまいちなおじさん      男    過去の世界で和子と知り合う人、流されやすい      女店員   過去の世界の花屋の店員 和子1「はーい、もしもし?」 父1「もしもし、和子(かずこ)ちゃん?」 和子「もー、ちゃんはやめてよお父さん、あたしもう24なんだから」 父「あのね、母の日のプレゼントの事なんだけど」 和子「えっ……まさか、まだ買ってないの? はぁー、なんで母さんは こんな優柔不断な、冴えない眼鏡と結婚したのかね?」 父「ごめん……」 和子「あやまったって仕方ないでしょ! 私がお花買って、そっちがプレゼント買うって 約束したじゃん」 父「はい……しました」 和子「私は約束守って、今花屋さんにいるんですけど、アナタは今どこで何してるんでしょうか?」 父「あのね、仕事が終わらなくってね、お父さん頑張ったんだけどね……」 和子「えー? 何? 声小さくて全然聞こえない。あ、このラベンダーかわいいなー 毎年カーネーションじゃつまんないし」 父「あのね、和子ちゃん、プレゼントの話なんだけどさ……あの、聞いてる? ちょっと、和子ちゃん?」 (いきなりタイムスリップ) 男「ちょっ! 危ない!」 和子「うわぁ!」 (ぶつかる) 男「いってー、あっ、眼鏡どこだ? 眼鏡、眼鏡」 和子「ちょっと、いきなり何なんです? どっからでてきたのよ?」 (和子、眼鏡踏む) 男「あ、」 和子「あ!」 男「ぼ、ぼぼぼっ僕の眼鏡がああああああっはぁ」 和子「え! これ君の? で、でもそっちがいきなりぶつかってきたんだし……」 男「眼鏡ェ……」 和子「いや、だから」 男「初任給はたいて買った眼鏡ェ……」 和子「……ごめん、これそんなに高い眼鏡なの? 20万くらいする?」 男「2万円ェ……」 和子「やっす! 今時そんなブラック企業あるのねー、かわいそう」 男「ブラック? なんですそれ? どこもそんなもんですよ」 和子「はいはい、わかりました。お姉さん弁償してあげるから許してねー はい、1万円」 男「ちょっ、2万ですってば!」 和子「ぶつかってきたのは君でしょう?、まぁ私の不注意もあったから半分だけ出すよ」 男「うわぁ、一万円札だ、すごいや、って! なんですかそれっ! 、いきなり出てきたのはそっちですよ? ……しかもこの一万円、なんか違うし」 和子「違うって、どこが?」 男「いや、顔の所とか……年号も」 和子「眼鏡無いからよく見えてないんじゃないの?」 男「そういうもんですかね。あ、眼鏡どうしよう……」 和子「新しいの作ればいいじゃない?」 男「今日いるんですよ、ああ、どうしよう。眼鏡に合わせて髪形も服装も きめてきたのに、これじゃ台無しだよ……」 和子「何よ、もしかして、君いまからデートとか? そのぶかぶかの ダサいジャケットにネクタイ締めて?」 男「アイビールックです(キリッ」 和子「なにそれ、むかつくから脱いでくんない? 脱げよ」 男「何で僕怒られてるんだろう。やっぱ東京わぁ、こえーとこなんだぁ……」 和子「まあ、なんにせよ眼鏡は無くても、そんなに変わんないよ、 むしろ相手のイヤそうな顔が見えなくなって、いいんじゃない?」 男「そうですかね? じゃあいいや、後はそこの花屋で花束を買って、と」 和子「花束もってくの」 男「うんっ!」 和子「……なんか相手の子が可哀想になってきたよ?」 男「女の人って、どういう花がすきなんですかね?」 和子「そうだね、正直あげないのが一番だと思うけど、どうしてもって言うなら そこの店員さんに聞いてみらいいんじゃないかなー……あれ?」 男「どうしたんです?」 和子「あの店員さんの名前……私と同じだ」 男「芳山(よしやま)って名前なんですか?」 和子「うん……あ、私も花を買いに来たんだった」 男「そうなんですか、じゃあ僕も同じのを買えばいいですかね?」 和子「好きにすれば? えーっと、あったラベンダー……」  (和子タイムスリップ) 男「あれ? お姉さん?……どこ行ったんだろう? 目の前に居たのに」 店員「いらっしゃいませ、お花探してるんですか?」  男「いや、その、えぇまあ、あはは……」 店員「ラベンダー好きなんですか? あんまり有名じゃないけど、私も一番好きなんですよ、可愛いですよね…… (場面現代へ) 父「もしもーし、おーい 和子ちゃーん、怒ったの? もしもーし、返事して欲しいなー……」 和子「あっ、なんだ、お父さんか」 父「なんだとは……ひどいじゃないですか……」 和子「うーん、今、男の子と話してたんだけど、何で私電話してるんだろう、何で?」 父「何でとか言われても、お父さんは、悲しいばかりです……」 和子「そういえばさ……お父さんってお母さんとどこで知り合ったの?」 父「え!、いやそれは、話せば長くなるんだけどね、ってあの和子ちゃん お父さん仕事中なんで今度でいいかな? だめかな?……あのね、今から40年前の母の日に ある花屋の店先で……」