『虎の戯れ』 思えば、これで何度目の戦であろうか。 もはや錆つきかけたこの身体、あとどれほど鞭を打てばよいのやら… などと考えている暇はない。ここは戦場だ。ほら、目の前に敵が――――― 考えるより先に、剣を握った腕が動く。 まるで息をするのと同じように、自然に、静穏に。 戦士の本能とでもいうべきか。 眼前の敵は鮮血を噴き出し、眠りにつく。 だがしかし、これは本能のもたらすものではない――――人より優れたこの剣の腕は、 これまでくぐり抜けた数え切れぬ戦場、 死んでいった敵たちの血が私に宿らせた呪いなのだ。 とはいえ、時の流れは止められぬ。 盛りを過ぎ、私の身体は力と俊敏さを確かに失っている。 だというのに…ふはは、何故私はこれほど昂っているのやら。 槍を打ち合う音は如何な音楽より心地よく、 戦士たちの怒号は如何な歌声より美しい。 はは、これぞ戦の呪いであろうな。 土に眠る前に、もう少しばかり遊ぶとしよう。