朗読「slip!」 それは一瞬の出来事だった。 私はつくづく不注意な人間である。可愛くいえば、ドジ。 漫画や昔の映画などではごくありふれた情景。 だけど現実世界ではまず起こりえない! 水溜りや氷の張った場所なら分かる、理解し得(う)る。 しかし、今現在このアスファルトは真夏の太陽に照らされカラリと乾ききっている。 私は何事も無く硬い地面を蹴って、目的地に急いでいるべきなのだ。 非情な非常の現実が私に襲い掛かる。 私の身体は前のめりになり、両足を地面から離して一瞬宙に浮いた。 顔とアスファルトの距離が刹那で縮まる。 いくら焦って走っていたからといって、こんなことは・・・こんなことは・・・!! 「ぎゃふん!」 前置きが長くなったが一言で言うと バナナで滑って転んだ。