一話 その2 ジョー1「はい、…はい。了解。指令だ。運び屋は蓮乃辺行きのバスに乗っている。      至急ターゲットを確保しろ、だそうだ」 ケンジ1「バスの詳細な場所は?」 ジョー2「今ボンボン組が衛星写真から割り出している。すぐにデータが送られてくるはずだ」 アキラ1「細かい情報は移動中に把握すればいい。行くぞ」 場面転換:バスに戻る 少女5「リリエンタール、絵本読んであげるね!」 おばあちゃん3「あらまあ、ずいぶん気に入っちゃって」 てつこ28「よかったらあげましょうか?」 兄28「おいおいてつこ…」 ナレ3「その時、猛スピードでバスに近寄る一台の車があった。    乗っている男達はみな一様に黒い服を着ている。」 てつこ29「ん…?」 バスに横付けした車が斧でバスの扉を壊し、 黒服三人組(アキラ、ジョー、ケンジ)バスに乱入 運転手5「な、なんだあ?!」 銃を向ける黒服 アキラ2「こっちは見なくていい。しっかり前向いてこのまま走らせろ」 大学生A2「銃だ!」 大学生B2「銃持ってるぞ!」 アキラ3「あー、騒ぐな。黙れ、座れ、じっとしてろ」    4「俺たちが用があるのはこの中の一人だけだ」    5「そっちのお子様もおとなしくさせとけよ。ガキの泣き声は嫌いなんだ」 少女6「お、おばあちゃん…」 おばあちゃん4「大丈夫、大丈夫よ。だから静かに絵本を読んでなさい…」 アキラ6「RD-1を持ってるやつ、大人しく前にでろ」 大学生C2「え?」 女子大生2「なにそれ…?」 てつこ30「RD、1…?」 アキラ7「……。出てこねえな。シラを切る気か」 写真を取り出すアキラ アキラ8「こいつを捨てたやつがこのバスに乗ってるのはわかってんだ」 てつこ31(あっ、あの箱…!) アキラ9「トボケてやがると関係ないやつまで痛い目を見ることになるぜ」 てつこ32(RD-1って、こいつのこと…?) 黒服に聞こえないように小声で話す兄妹 兄29「まいったな。リリエンタールを狙ってる人達みたいだ。てつこ、なんとか出来ない?」 てつこ33「一般人さえいなかったらどうとでもなるけど…      今は無理。なにか大きな隙でもなきゃ」 ジョー3「運び屋の人相がわからんのは面倒だな」 アキラ10「チッ。まったくだ。…それにしても目撃者のじいさん、あの人が直々に     問いただしたっていうのに口を割らなかったとは、大したもんだぜ」嫌味っぽく てつこ34(目撃者のじいさんて…。…あっ! あのおじいさん…!) アキラ11「だが口を割らなかったってことは、逆に考えれば      じいさんがかばいたくなるような相手…。女・子供か?」 バスの中をゆっくり歩くアキラ アキラ12「お前か」 女子大生3「えっ?!」 アキラ13「お前だろ。さっさとRD-1を出せ」 女子大生4「え、し、知らない。私知りません! ホントに!」 アキラ14「しらばっくれやがって…撃たれてから後悔しろ」 女子大生5「うそ、ちょっと!」 すぐ横で真っ青な顔をした少女はブルブル震えながら小声で息を飲む 少女7「う…うう…」 大学生A3「お、おいやめろや! その子違う言うてるやんけ!」 銃をつきつけられて 大学生A4「うっ」 アキラ15「関係ないやつが撃たれそうになって慌ててかばった…      てことはお前が運び屋か?」 大学生A5「ちちち違…」 まだ小声で話す兄妹 兄30「あれは本気じゃない。ああやって僕らが名乗りでるのを待ってるんだ!」 てつこ35「わかってるわよ! けど…!」 アキラ16「あー、めんどくせえ」 窓に向かって発泡する 女子大生6「きゃああああ!」 大学生B3「う、うわ」 大学生C3「わああ」 アキラ17「運び屋に当たるまで順番に撃っていくとするか!!」 大学生C4「なっ…?!」 女子大生7「いやあああ!」 てつこ36(もう名乗りでるしか…!! ハッ…?!(何かに気づく)) ゴポリゴポリと水の音が聞こえる。 アキラ18「あ…?  ――な……なんだこりゃあ?!」 気づけばバスの外が海の中になっている。 ケンジ2「なんだ?!」 運転手6「これは、一体…」 ナレ4「気がつけば、バスは青い青い海の中をゆったりと走っていた。    まるで潜水艦のように。窓からはたくさんの魚が見えた」 てつこ37「何…?」 兄31「魚…?」 真っ青な顔で淡々と絵本を読む少女の姿が目に入る。 少女8「…くじら号はきれいなサンゴ礁の海を行きます。きれいな魚がたくさんついて泳ぎます」   9「魚たちはくじら号が島をだいぶ離れるまで見送ってくれました」 女子大生8「どうなってるのこれ?!」 大学生C5「魚だ!」 大学生B4「外が海ん中だ!!」 アキラ19「さ…さわぐな! おい、座ってろ!」 てつこ38(なにこれ……夢? 幻覚?) 少女10「お別れの時魚たちは言いました。『きをつけて。海の底には恐ろしい怪物がすんでいるから』」   11「くじら号は海の旅を続けます」 アキラ20「どういう仕掛けだ…?! まさかRD-1の力なのか?!」 てつこ39(RD-1…リリエンタールの…?!) 少女12「おおうなばらにでると、大きなまぐろのむれに出会いました」 兄32「マグロだ…! 絵本の通りになってる…?!」 アキラ21「…このガキ!! そいつをよこせ!!」 絵本を無理やりとられかかって 少女13「いやっ! 離して!」 おばあちゃん5「や、やめてください!」 少女14「たすけて! 助けてーーー!!」 アキラの腕に噛み付くリリエンタール。 リリ20「ほぬーーー!!」 アキラ22「いてえ!! なんだこいつは?!」 リリ21「(腕を咥えながら)はなせい! はなせい!」 ごまかすために白々しく叫ぶ二人。 てつこ40「(ヤバい!)きゃー、ぬいぐるみまで勝手に動き出したわー!」 兄33「わあ、なんて不思議な!」 大学生A6「ホンマや!」 大学生B5「ぬいぐるみがかみついた!」 てつこ41「ホッ」 アキラ23「邪魔だ!!」 床に払い落とされるリリエンタール。 リリ22「おぶっ」 少女から絵本を奪い取るアキラ。 少女15「あ!」 アキラ24「こいつがRD-1か?!」 アキラが本を閉じると、途端に海がなくなりバスが真っ逆さまに落ちて行く。 ナレ5「本が閉じられると同時に周囲の海は消え、バスは底の見えない    暗闇の中へ真っ逆さまに落ちていく!」 大学生C6「うわっ」 アキラ25「くっ!」 女子大生9「きゃああああ」 運転手7「落ちてるぞおおっ!!」 兄34「絵本を!!」 てつこ42「リリエンタール!!」 てつこが絵本をリリエンタールに投げ、リリエンタールが本を開く。 リリ23「ほあいっ!!」 バスは海の中へ飛び込む。 大学生B6「うおっ!」 大学生C7「いてぇ!」 兄35「いてて……海に戻った…?」 てつこ43「なんでこんなに暗いの…?!」 その時、リリエンタールがぼんやり光っていることにてつこは気づく。 てつこ44(光ってる…?! やっぱりこいつのしわざ…?!) 女子大生10「ひっ! そ…外!!」 兄36「え? う、うわ…」 外には怪物のような巨大な魚が。 ジョー4「で…でかい…!」 アキラ26「落ち着け! こんなもん、全部幻覚だ!!      ここが本当に海の中なら水が入ってくるはず…」 轟音とともに魚がバスに食らいついた。 ジョー5「きたっ!」 女子大生11「きゃああああああああ!!!」 大学生B7「わあああああああああ」 怪物に銃を撃ちまくる。 ケンジ3「う、うおおおおお」 怪物がバスに食らいつく中、 少女16「こわいよ…こわいよ…こわいよ…こわいよ…」 少女の様子に気づくアキラ アキラ27「本のページを変えろぉ!!」 兄37「そうか、絵本のページを変えれば…!」 リリ24「ほいさ! ほいさ! んんっ?!」 絵本をめくるてつことリリエンタール。しかし、 てつこ45「だめだわ!! 全部同じ場面になってる!!」 アキラ28「なんだと?! どういうことだ!!」 てつこ46「知らないわよ!!」 少女17「こわい…こわい………助けて…だれか助けて…!!」